遺品整理が終了したあと、故人のブログやWebサイトを引き継ぐ場合は、これまでとは別の心配りや作業が必要になる。遺族が故人のブログに訃報や葬儀の情報を載せる例は少なくないが、何年も継続的に管理と情報の更新を続けているサイトは本当にごくわずかだ。それだけ継続的な引き継ぎは難しい。
その貴重な一例である、『純情仔猫物語』の2代目管理人・ミッキー部長さんに引き継ぎの難しさと秘訣を伺った。その生の声を伝えて、本稿の終わりとしたい。
『純情仔猫物語』は、仔猫の一時預かりボランティアをしていたKAZUさんのブログ。2011年8月に氏が病気で急逝したあと、生前から家族同然で接していたミッキー部長さんがブログ(と活動)を引き継ぎ、不定期更新ながら2013年4月現在まで精力的に記事を更新し続けている。
――管理人を引き継いだ経緯を教えてください。
ミッキー部長: KAZUさんが入院した際、その様子をブログで報告してほしいと頼まれたのがきっかけです。ただ、そのときは正直私もKAZUさんも死後のことは考えてませんでした。
亡くなられたあとに私がブログを更新し始めたのは、自分の意思です。読者の方に彼女の生き様を知ってほしい、そして私がブログを更新することで多くの方が感じていた悲しみを共有し、癒すことができるのではないかと考えたからでした。
――引き継ぎの際、アカウントや承継やパスワードの把握など、事務的な作業はどのようにされたのでしょうか。
ミッキー部長: 彼女のご主人の会社で働いていることもあり、彼女のPCのセットアップは私が行っていたので、メールアドレスやアカウントなどの情報は最初から把握していました。ブログを更新する過程でパスワードが分からない部分もありましたが、そこは彼女が入院している際にひと通り聞いたので問題ありません。
対外的な引き継ぎが必要だったのは決済の変更手続きです。『純情仔猫物語』は有料サービスを利用しているので、決済用のクレジットカードを彼女のものから私のものに移動し、今は登録名義も私が引き継いでいます。
――実際の管理……記事を更新したりコメントに返信したりする際に、意識しているルールなどはありますか?
ミッキー部長: KAZUさんに最大限の敬意を払うと同時に、読者の方にも彼女と同様の敬意を払っていることです。私が引き継いだとはいえ、純情仔猫物語はKAZUさんのブログであるということは、読者の方もよく知っていますので、借り物であるという前提を持ち続けています。彼女の名誉を汚さないためにも、文章や表現などには最大限の注意を払っています。極力誰も傷つけないように、平和で穏やかになるような表現を心がけています。
――借り物として何年も更新を継続するのは難しいことだと思いますが、モチベーションをどのように保っているのでしょうか?
ミッキー部長: ご指摘のとおり、非常に難しい課題だと思います。『純情仔猫物語』は前提としてKAZUさんに借りていると考えるようにしていますが、それでも今では私のブログであることは間違いがありません。読者の方もそう受け止めていらっしゃると思います。やはり、亡くなった方とまったく同じような更新頻度も記事もできませんから。気持ちを入れ替えて、新しい形のブログができればいいなと考えながら更新を続けています。
何よりもブログを廃れさせてしまうことが申し訳ないという思いがあります。自分ができる範囲で、彼女が残した足跡、生きた証をつづりたいという気持ちが強くて、それがここまで何とか続けられた一因かと思います。
――今後、どれだけの年月残したいという時間的な目標や期待はありますか?
ミッキー部長: 何とも考えていないのですが、私が管理できるうちは荒らされることがないように努めたいと思っています。更新頻度を保つのもなかなか厳しいのですが、お墓が雑草で生い茂るようなことにはしたくないです。
ただ、自分の死後に何かを残したいとは考えていません。可能であれば、私が続けようと思ううちは続けて、更新をやめようと思ったときには、明確なエピローグのようなもので締めくくりたいと思っています。コメントも受け付けず、こちらからの感謝の気持を伝えて終わりにできたらなと。ただその気持も後々変わってくるのかもしれませんが……。
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