尊厳を守って迷惑を防ぐ!――インターネットの遺品整理2013古田雄介の死とインターネット(2/3 ページ)

» 2013年04月19日 08時00分 公開
[古田雄介,Business Media 誠]

「遺志の確認」から「遺品探し」、「遺品処理」の流れが基本

 ネット遺品の調査法は故人の環境や調査する当人の立場によって大きく変わるので、具体的な方法は言及しない。ただし、何もない状態から進めるなら、第一に「遺志の確認」、第二に「遺品探し」、第三に「遺品処理」という流れはおおむね共通するだろう。友人の場合は「遺品」ありきで遺志や意思に沿った処理を行うケースが多いかもしれないが、ここは遺族ベースでおおまかな流れを説明したい。

死とインターネット ネット遺品整理の大ざっぱな流れ。行程によって当たる対象が変わるが、PCやスマホなどの「故人のメインマシン」は全行程で必要になる。逆にメインマシンが手元にないと作業は困難を極める

 「遺志の確認」は、生前のやりとりやエンディングノートなどから、故人の望みを確認する作業だ。故人によっては、PCやスマホ、あるいは自分のWebサイトに残している可能性もあるだろう。また、それらの書類にネット遺品リストが添えられていることもあるので、注意深く探したい。

 「遺品探し」は主に、PCやスマホに入っているWebブラウザーやメーラー、クラウド系アプリをチェックする作業になる。Webブラウザーなら「ブックマーク(お気に入り)」や閲覧履歴から、利用しているサービスやサイトを見つける流れだ。メーラーなら「登録完了」や「パスワード」「へようこそ」など、会員登録や認証時の定型の件名を検索ワードにかけるのが王道か。

 ただし、これらの作業で登録不要のサイトやスパムメールなどのノイズを除外するには、ある程度操作に慣れた目が必要になる。不安を感じたら、そこから先の作業は信頼できる助っ人に頼んだほうがいい。なお、ここがもっとも故人の尊厳を傷つけやすい行程になることは念頭に置きたい。

 最後が肝心の「遺品処理」。故人の意向と当人たちの考えにそって、消去や引き継ぎなどの処理をしていくことになる。この段では、身内だけでなく、各種ネットサービスを提供する事業者のスタンスが関わってくる。各サービスでできることは、事業者が設けた利用規約の範囲内に限られる。たとえ故人が望んでいても実現できない処理もある。

 注意したいのは、故人のアカウントを引き継ぐ場合だ。遺族や相続人によるアカウントの引き継ぎ(承継)を認めているサービスが増えている一方で、権利はあくまで契約者個人に帰属する(つまり、承継を認めない)というスタンスも伝統的に多く、現在のネット業界は両者が混在している。

 それでも、厳密な本人確認を経ていない無料サービスの多くは、IDとパスワードを内々に引き継ぐ行為を黙認する場合が多いし、承継を認めないサービスでも契約解除の処理は特例措置で遺族に認めるのが通例となっている。

 当面は、「銀行口座から定期的に料金を引き落とす定額有料サービスで、承継を認めない場合は、引き継ぎNG」と覚えておきたい。また、ネット銀行の預金口座やアフィリエイト契約など、直接的な資産を扱うサービスは、振り替えを認めつつ承継は認めない場合がほとんどだ。

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