ケータイメールは死ぬのか神尾寿の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年04月17日 08時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 今から10年前、「メアド教えて」といったら、ドコモのiモードやauのezwebといった携帯電話会社(キャリア)のメールアドレスを尋ねることだった。これら通信キャリアが提供するメールサービス、キャリアメールはケータイメールとも呼ばれ、“ケータイ”の普及とともに急速に広がった。日本ではPCよりも先にケータイが1人1台のネット端末になったことや、海外に比べてショートメッセージサービス(SMS)の使い勝手が悪かったこともあり、キャリアメールは人々の生活に欠かせないコミュニケーションインフラになったのだ。

 そのキャリアメールが、衰退し、死につつある。

 若年層を中心にキャリアメールの利用頻度は下がりつつあり、パーソナルコミュニケーションツールの「王座」から追い落とされかけている。キャリアメールの存在感がなくなりつつあるのだ。

「あけおめメール」はどこへ行った?

 「わざわざメールサーバーを増強したのに、肝心のトラフィック(通信利用量)自体が昨年より減ってしまった」

 2013年の年始めの話だ。ある大手通信キャリアの幹部が、そう漏らした。その会社では2012年にスマートフォン向けのキャリアメールサービスでシステム障害を起こしてしまい、毎年、元旦に起こる「あけおめメール」による輻輳 (ふくそう、設備の混雑により、つながりにくい状態になること)に並々ならぬ決意で備えていたのだ。

 しかし結果は、"肩すかし"だった。

 確かに年明け早々、通信インフラの利用量は例年どおり急増した。だが、キャリアメールの利用は前年よりもかなり少なく、メール設備の負荷は想定を大幅に下回った。そのおかげで「うちのメールの輻輳や遅延はほとんどなかった」と、その大手キャリア幹部は苦笑混じりに話す。

 あけおめメールはどこにいったのか? その答えは、「LINE」や「Twitter」、「Facebook」など新興のメッセンジャーサービスやSNSにある。これら新たなコミュニケーションサービスに、「あけましておめでとう!」と新しい年が明けてすぐに送る“あけおめメッセージ”が流れ、半面、キャリアメールの利用が著しく減ったのだ。

 →あけおめメールならぬ、あけおめLINE(参照記事)

 その一方で、ユニークな変化も見られたという。「年明け早々のメールトラフィックは減少したのだが、実は(夜明け後の)元日の午前中の利用は減っていない。キャリアメールの位置づけが変わってきたのかもしれない」(大手キャリア幹部)

 深夜0時の年明け早々の挨拶需要は、LINEや各種SNSに奪われてしまった。その半面、キャリアメールは年賀状っぽく使われたというのだ。これはキャリアメールが、リアルタイムでパーソナルなコミュニケーションサービスの座を奪われ、インターネットメールのような“普通のメール”という位置づけになってきていることの証左と言えるだろう。

年明けの瞬間にケータイで送信する「あけおめメール」は、例年、輻輳を起こすほどの通信量だった(写真と本文は関係ありません)
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