放送でインターネット――放送と通信の融合は普及するか?中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)

» 2013年04月17日 10時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]
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通信と放送の間をつなぐ「セカンドスクリーン」「セカンドデバイス」

 もちろん「セカンドスクリーン」も有望だ。セカンドスクリーンは世界的にも注目されている。でも、地デジ化が完了して何が変わったか? 映像がきれいになり、周波数の利用効率が高まったが、それだけでは新しいビジネスにはならない。それは、通信と放送の間を「つなぐ」ものがなかったから。画面を汚すことなく、つまり既存の広告モデルを壊すことなく、通信と放送をつなぐことが放送側から求められていたわけだ。そのためには、放送のタイムラインに合わせて、セカンドデバイス上でコンテンツを制御することが重要となる。

まだ「スマート」なるものの姿が確定しない

 映像コンテンツの過半をテレビ業界が押さえている日本では、放送主導でのサービススタイルとビジネスモデルを設計できるかどうかがスマートテレビの行方を左右する。現在、音声ウォータマーク、フィンガープリントなどさまざまな技術が使われている。でも、遅延のない精密で本格的な同期制御のためにはIPDCが有望だ。

 この日本型のスマートテレビのカギは、IPDCを受信できる受像機の普及にある。もちろん、地デジ化したばかりでテレビ本体の買い替え需要を期待するのは無理がある。この打開策として、私たちは地デジのテレビの横に数千円程度のIPDC受信ルータを試作する試みを行っている。

 マーケット形成のために、日本の地デジ方式と、ISDB-Tを採用する国々が連携することがポイントとなる。むろんこれは、日本だけで実現できることではない。ISDB-Tを採用するブラジルをはじめとする南米といかに連携できるか。いきなり国際対応が重要課題になっている。実は、ブラジルのサンパウロ大学と国際連携策を進めているところだ。

 これに少し先立つCEATECの展示は、「スマート」一色だった。スマートテレビだけでなく、スマート家電やスマートハウス、スマートシティなど、通信、メーカーをはじめとする情報関連産業がスマートの名の下に戦略を模索する様子が明らかとなった。

 家電メーカーはネット対応のテレビを展示する一方、サムスン電子のスマートTVやGoogleTVとは異なり、マルチスクリーン連動モデルを前面に掲げていた。また、テレビやスマホ、タブレットだけでなく、冷蔵庫や洗濯機などのいわゆる白物家電ともつないでスマートハウスを提案してみたり、電力供給と結び付けたスマートシティーを唱えたりしていた。

スマートな自動車とメディアの結合

 これは苦境にあえぎつつ新市場を拓く涙ぐましい努力である一方、「スマート」なるものの姿が確定しない現時点において、未来の可能性を示すものでもあろう。今回は自動車メーカーも参加し、自動車とメディアの結合も数多く提案されていた。スマートテレビの可能性は、従来のテレビの延長線上ではなく、まったく新しい姿を伴って提示されることになるのかもしれない。

 テレビを軸にしながら、あれこれがつながっていく近未来。その実像がぼんやり形になってくると、何やら楽しい。今年のCEATECやInterBEEでは、どんな姿となって現れるのだろう。

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