世界は日本の財政再建を待ち焦がれている藤田正美の時事日想(1/2 ページ)

» 2013年04月17日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 安倍首相が絶好調だ。総理大臣や日銀総裁の話題が連日のように外国紙誌を飾っている。こんなことは久しくなかった。外国メディアは、ちっとも名前を覚えられない年替わり総理にはいい加減ウンザリしていたし、そもそも日本が何をしたいのかがまったく見えなかったから興味を失っていた。その点、安倍首相ははっきりしている。3本の矢のメッセージも、憲法改正のメッセージも分かりやすい。

 安倍首相に選ばれた日銀の黒田新総裁は首相の期待に応えて、大胆な金融緩和を実施し、円安の流れを加速した。これで少なくとも輸出産業は一息つくことができる。デフレに苦しんでいるときに、歴史的な円高によって競争力を失った結果、シャープやパナソニックは大打撃を受けた。それらの企業が失地を回復するにはもはや遅すぎるかもしれないが、他の企業にとっては干天の慈雨(かんてんのじう)になるだろう。

 もちろん円安は日本経済にとってマイナスの部分もある。外国ブランドの値段が上がるのはともかく、小麦やトウモロコシといった食糧が影響を受けるだろうし、エネルギー価格も上昇する。幸いなことに、こと石油に関していえば、米国のシェールガスやオイルのおかげで、相場上昇は抑えられている。世界最大のエネルギー消費国である米国が石油やガスを輸入しなくなれば、その影響は小さくない。円安でエネルギー価格が上昇すればダブルパンチになるときだっただけに、日本にとってはラッキーだった。

 日本が本当に経済を回復させ、数パーセントであっても安定成長軌道に乗ることができるかどうか、それはまだ分からない。国内的には環境は整いつつある。金融が緩和され、総額100兆円を超える昨年度の補正予算と今年度予算が実行されれば、それだけでも2%程度のGDP押し上げ効果はあるだろう。

 しかし日本を取り巻く環境はそう簡単ではない。先週、IMF(国際通貨基金)のラガルド専務理事は、世界経済を「3つの速度のグループ」(a three-speed global economy)と呼んだ(参照リンク)。3つとは「うまく行っているグループ」、「回復中のグループ」そして、「まだ苦境にあるグループ」である。もちろん日本はEUと並んで「まだ苦境にあるグループ」に入っている(ちなみに米国は回復中のグループ、アジアの新興国はトップグループとして位置付けられている)。

 問題は、米国、欧州、日本という世界経済の牽引車となってきた国や地域が、力を失っていることだ。

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