紙袋をやめて、7万2000円の商品が返却された――パタゴニア、4つのコアバリューとは気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(1)(3/6 ページ)

» 2013年04月12日 12時00分 公開
[Business Media 誠]

価値観と行動をそろえ「有言実行」を意識

中土井:辻井支社長ご自身が部下と接するときに気を付けていることは、どのようなことですか?

辻井::一番心がけているのは、有言実行です。英語で言うところの“walk the talk”ですね。言ったとおりに歩く。つまり、普段言葉にしている価値観と行動が乖離(かいり)しない、嘘をつかないということです。僕自身ができているかどうかは別として、言っていることとやっていることが違う上司なんて、ついていきたくないですよね(笑)。

中土井:よく言われますよね。

辻井:パタゴニアには4つのコアバリューがあります。これらは私たちの行動指針ですが、この価値観が自分のものになるように努力しています。

 例えば「質」は品質だけでなく、カスタマーサービスやコミュニケーションなどあらゆる場面に適用できます。「誠実さ」というのはカスタマーだけでなく、サプライチェーン、同僚、地球環境など、全ての人・事柄が対象です。また「環境主義」は私たちにとって核になっているので、決して忘れてはならない大切な価値です。そして「これまでのしきたりにこだわらない」というのは、例えば「過去にうまくいったから今回もそうしました」というように、過去の成功例や慣例を踏襲するのではなく、今、必要なチャレンジをし続けるといったあり方のことです。

パタゴニアの4つのコアバリュー(価値観)

Quality(質) すべてに関して最高の質を追求する
Integrity(誠実さ) 誠実さと尊敬の心をもっ他者との関係を確立する
Environmentalism(環境主義) 個人でも会社としても環境活動を促進する
Not Bound by Convention(慣例にとらわれない) これまでのしきたりにこだわらない

中土井:1996年にパタゴニアさんは使用するコットンのすべてをオーガニックに切り替えたそうですが(参照リンク)、それもパタゴニアのコアバリューに基づいた決断だったのでしょうね。

辻井:はい。当時はオーガニックコットンの供給量も十分ではなく、コストが跳ね上がることは明らかでした。ですので通常の経営基準であれば、考えられない決断だったと思います。しかし、当時の経営幹部と社員は心から正しいと考えたから、あえてリスクを取ったはず。コアバリューはミッションとともに、自分たちがどこに行くべきかを教えてくれる大きな指針となっているんです。

 このコアバリュー(4つの価値観)が大切だと(社員や外部に日頃)言っているのに、自分がそれに反する行動をしていたらおかしいですよね。だから、「有言実行」を心がけています。

聞き手の中土井氏(左)とパタゴニアの4つのコアバリューについて語る辻井氏(右)

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