紙袋をやめて、7万2000円の商品が返却された――パタゴニア、4つのコアバリューとは気鋭の経営者に聞く、組織マネジメントの流儀(1)(2/6 ページ)

» 2013年04月12日 12時00分 公開
[Business Media 誠]

リーダーを真ん中にした「輪」の形

中土井:パタゴニアのことを知ると、「楽しそうな会社なんだけど、ウチの会社とは違うなあ」「あの会社の働き方は真似できないよ」と思う人が多いと思います。でも組織である以上、マネジメントの基本は変わらないのではないかと私は思っています。

 他の企業とパタゴニアの共通点が、どこかにあるのではないか――。この回答を見つけたくて、日本支社長の辻井さんにお話をうかがえればと思っています。

 まず、多くの新任マネージャーが陥るワナのひとつに「上司はこうあるべき」という「あるべき論」があると思っています。でも、部下に対してもっと自分らしく関わるやり方があるのではないでしょうか。辻井さんは、マネジメントについてどのようにお考えですか?

辻井:最近、自分の中でしっくりきたマネジメントを表す図がありました。「サークル型」なんですけど、全米ガールスカウト連盟会長のフランシス・ヘッセルバインさんの「リーダーはセンターにいる」という話を、ある人の講演で聞きしました。組織全体やプロジェクトを捉えるとき、図としては「組織のリーダーを真ん中にした大きな輪」になると。

中土井:どういうことでしょうか?

辻井:各プロジェクトでは、そのリーダーを中心にした輪ができ、真ん中にいるリーダーが周囲にいるステークホルダーとともにプロジェクトをリードする。そんなイメージが、自分にとってはしっくりきたんです。

中土井:よく組織はトップダウンの三角形とか、ボトムアップの逆三角形という言い方をしますが、丸なんですね。

辻井:私はこれまで、三角形を組み合わせたひょうたん型のイメージを持っていました。トップダウンとボトムアップが融合した形です。例えば、次年度の戦略を話し合う会議があるとします。私はパタゴニアの日本支社長として、自分の考えを伝えつつ、次期戦略をマネジメントチームとともに合意しながら、形成します。この戦略は各部門のスタッフにマネージャーを通じて伝えられます。

 これを形式に当てはめて表現しようとすれば「トップダウン」ということになると思います。一方、各部門のマネージャーは戦略会議の場に、現場で感じた想いやメンバーからのフィードバックを背負ってきていて、意見を言ってくれます。ですから、トップダウンに見えても現場からの意見を吸い上げるボトムアップの要素を同時に取り入れることができると考えていました。

ひょうたん型のマネジメント図。今まで辻井氏が考えていたトップダウン型とボトムアップ型が融合した形

中土井:なるほど。

辻井:この方法は、組織全体の大きな戦略や方向性を定める際には、有効な方法だと今も考えています。でもヘッセルバインさんの、ある瞬間には自分がセンターにいるが、他の人がセンターにいる輪も同時にあって、それが連鎖して世界中が輪になるという考えを聞いて、すごくふに落ちたんです。というのも、組織において個々のメンバーが業務を行う際には、周囲に常に大勢のステークホルダーがいて、できるだけ広い視野を持つ必要があると感じていたからです。考えてみれば、大きな戦略を形成する作業でも、たまたま日本支社長がその中心にいるだけとも言えるんですね。

中土井:それが、「サークル型」の図になる、と感じられたわけですね。

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