しかし、現実問題として、ファンドマネージャーのPC画面には、いくつもの新規「買い推奨」の文字が並んでいたのだ。しかも、ほとんどのアナリストは先の新戦略にフォーカスし、「ソニー復活の起爆剤」的な捉え方をしていたのだ。
私の顔を見たファンドマネージャーは、こんな見方を示してくれた。
「ソニーの新戦略は明確にアップルの二番煎じ。かつ、スマホやタブレットなど個々のデバイスに関しても昔のソニー製品のような飛び抜けた個性はない」
では、なぜ内外の一流証券会社のアナリストがそろって買い推奨を促したのか。もう一度首を傾げると、ファンドマネージャーが声を潜めた。
「……証券業界特有のネガティブな要因がある」というのだ。
核心に触れる前に、ソニーを株価のモノサシであるPBR(株価純資産倍率)でみてみよう。同社のPBRは本稿執筆時点(4月6日)で0.79倍。PBRは、会社が保有する純資産と株価を映した指標であり、一般的にはこれが1倍であればほぼ底値と判断される。換言すれば、会社が解散した際の企業価値と同等になるポイントが大まかに1倍なのだ。
ネット上でいくつか用語解説をのぞいてみると、「1倍以下は極めて割安か、倒産の可能性があることを指標が示している」。
翻って、もう一度ソニーのPBRをみてみる。くどいが、0.79倍であり、極めて割安かつ倒産の可能性も考慮するべき銘柄だと主要な分析指標が提示しているわけだ。
「主要な株価指数と連動するファンドを持つ機関投資家以外、こんな低PBR株、指標的にはボロ株を買えない向きが多い」とは先のファンドマネージャー。
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