日本のプロ野球や米メジャーリーグを中心としたスポーツ界の裏ネタ取材を得意とするライター。WBCや五輪、サッカーW杯など数々の国際大会での取材経験も豊富。
プロ野球のペナントレースが開幕を迎えた。2013年は日本ハムの二刀流ルーキー、大谷翔平や阪神のドラフト1位、藤浪晋太郎ら大物新人たちの活躍が期待され、焦点ともなっている。確かにルーキーたちの今後は非常に楽しみだが、そんな華々しい話題で盛り上がりを見せても日本球界に残る“WBC敗戦ショック”はいまだ完全には消え去っていない。
まさかの3連覇失敗。第3回WBCに臨んだ日本代表、侍ジャパンは日本中の期待を背負いながらも3月17日に米サンフランシスコのAT&Tパークで行われた準決勝でプエルトリコに敗れ、無念の4強止まりに終わった。
今も世間では山本監督ら首脳陣に対する厳しい批判と責任追及を求める声がくすぶり続けている。プエルトリコ戦の8回に強行しながらも不発に終わった重盗など物議を醸しているベンチワークは数多い。采配の良し悪しは別として、結果がすべての世界であるがゆえに指揮官とコーチ陣が現場を預かっていた以上、3連覇を逃した首脳陣が責められるのは仕方がないことであろう。
しかし、本当に彼らだけが「A級戦犯」と断じてしまっていいのか。今大会の舞台裏をあらためて検証してみると、侍ジャパンを全面サポートしなければならなかったはずの日本野球機構(NPB)のバックアップ体制が余りにもズサンだったことが浮き彫りになってきた。
「『一体どうなっているんだ?』と首をかしげたくなるようなことが数多く起こり、グラウンド外のところでとてもイライラさせられた。それでもNPBは何もしてくれなかった」と憤慨するのは、ある代表選手だ。
イライラが頂点に達したのは大事な準決勝の前日だった。アリゾナからサンフランシスコに移動してのチーム練習は正午から午後2時まで行われる予定だったが、当日の朝になって急きょ変更。選手の用具がサンフランシスコではなくロサンゼルスに運ばれていたことが判明し、練習開始時間を午後7時からに遅らさざるを得なくなってしまったのである。
選手、そして首脳陣やスタッフたちは、すでに昼からの練習開始に備えて準備していた。まさかの「ロストバゲージ」というあり得ないミスが起こらなければ、侍のメンバーたちは予定変更を強いられることなく翌日の大一番に備えてしっかりとリフレッシュする時間も取れたはずだ。
とんでもない事態は、その後もさらに続いた。スタート時間が変更になったナイター練習を終えて選手たちが宿舎に戻ろうとすると、今度は移動用バスのバッテリーが上がってしまい、その場で立ち往生。
「10分で代わりのバスを用意するから心配はない」との説明があったものの待てど暮らせど、代車のバスは到着しない。結局、動かなくなったバスをスタッフが手押しで横に移動させ、裏方やNPB関係者が乗っていた2台目のバスに便乗。メンバーやスタッフたちは1台のバスにぎゅうぎゅう詰めになりながら帰路に着いた。
「あのときは正直言って皆、疲労困憊(こんぱい)だった。日本のマスコミは“アウェーの洗礼”と報じていたが、それはまったく違う。相手はプエルトリコなんだから(決勝トーナメントの開催地の)米国が我々に妨害工作をする理由がないでしょう。あれは荷物が届かなかったことと同様に大会主催の『WBC Inc』のミス。とはいえ、その主催者側にNPBの上層部がまったく抗議すらしなかったことのほうがボクらにとっては驚きでした。『NPBは本当に侍ジャパンをバックアップしてくれているのか』って誰もがブチ切れていましたよ」と前出の代表選手は怒りで顔を紅潮させながら振り返った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング