新卒採用における「選考とは関係ありません」の真偽に迫るサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年03月25日 09時30分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

選考に関係ない、なんてことはあり得ない?

 結論から言います。就活生に向けて実施されるインターンシップはほぼすべてが採用選考活動です。

 「採用選考に関する企業の倫理憲章」に書かれている通り、本当に学生の就業体験の機会を提供するものなのであれば、大学1年生や、それこそ高校生にも門戸は開かれるべきです。でも実際には、そんなことはレアケース(ここに就業体験としてのインターンシップのあり方が書かれていますので、気になる人は読んでみてください)。ほとんどは大学3年生のプレ就活と呼ばれる時期に実施されるイベントなのです。その時点ですでに、どういう目的で実施されるのか一目瞭然ですよね。

経団連の「採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料」の中に「インターンシップについて」という項目がある

 インターンシップに参加するための手続きも、その多くが実際の就活と似ています。ネット上でプレエントリーをして、エントリーシートを書き、面接を経て、やっとインターンシップへの参加資格を得るなんてケースはザラです。単なる就業体験の機会提供ならここまでする必要はないし、応募者が多いなら抽選でもすれば良いのです。

 インターンシップに参加する学生の中から、めぼしい人をリストアップして継続的にフォローするのは、新卒採用担当者の仕事の中でも、基本中の基本。考えてみれば分かると思いますが、インターンシップを実施するための費用は決して安くありません。時間を割く採用担当者たちの人件費ひとつとっても、かなりの金額です。それを「採用選考目的としない」のにやるなんてことは、よほどの企業でない限りあり得ないのです。ただ、建前としては「採用選考に関する企業の倫理憲章に書かれている」から、多くの企業のリクルーティングサイトや就活ナビサイトには「採用選考目的としていない」と書いているにすぎません。

 しかし、これを真に受けてしまう就活生はたくさんいるのです。いや、正しく書くなら「真に受けることで、自分の行動を納得させる」就活生がたくさんいる、と表現した方が適切かもしれません。彼らは「インターンシップに参加しない」という選択を採りたいのです。サークル活動が忙しいとか、アルバイトのシフトの関係でとか、まだ就活はしたくないとか、理由はさまざまですが、とにかくインターンシップに参加できない(もしくはしたくない)。しかし、「どうやらインターンシップに参加するほうが就活には有利である」とも知っているのです。ただ、自分はできない。だから「インターンシップに参加しない正当な理由」を探し出すのです。

建前を建前と知っていて活用する就活生たちの存在

 ネットで少し調べれば「インターンシップは採用選考活動ではない」とあらゆるところに明記されています。そういう記述がごろごろ出てきますので、就活生たちは安心して「インターンシップに参加しないでも大丈夫」と思い込みます。実際は思い込みにすぎなくても、正当なお墨付きがあるのだからインターンシップに参加しない自分が悪いのではなく、それを採用選考活動に利用している、つまり嘘をついている企業が悪いと、責任を転嫁することも出来るのです。こう書いていて「責任を転嫁するという表現も変だな」と、私自身も思っています。そう、有名無実の金科玉条のようなものの存在が、話をややこしくしているのです。

 最近のニュースで、企業の採用選考活動時期の後ろ倒しが取りざたされていました。これにしても、実際は就活ナビサイトのオープンが遅れたり、企業のリクルーティングサイト開設時期が後ろになったり、公式の選考を実施する時期がずれるだけです。多くの企業はインターンシップや会社見学、ビジネスコンテストなど、さまざまな方法で学生と早期接触し、選考を重ね、めぼしい学生に目を付けて囲い込みに躍起になるでしょう。そして、建前を建前であると理解している就活生は、その建前の向こうに透けて見える企業の意図を汲み取って、さっさと就活をしてしまうのです。

 また、就活を先送りしたい学生にとっても「まだ就活は始まっていない」とお墨付きを与えるわけですから、就活する時期が遅れて、その結果就活が上手くいなくても、少なくとも自分の責任ではないと言い張れるのです。ルールを守っているわけですから。

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