“誰得”なの? 西武鉄道の「赤字線切り」が始まっている杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年03月22日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

阪神電鉄の買収騒動との違い

 私たちは2006年にも、似たような事例に遭遇している。村上ファンドによる阪神電鉄の買収騒動だ。阪神電鉄の価値が実態より低く見積もられていると知った村上ファンドが、阪神電鉄の株式を買収した。この騒動において、村上ファンドは鉄道経営を本意としていなかったと言われている。だから球団運営や京阪奈鉄道網を含む株主提案をしてみたものの、それは株を高く売り抜ける口実だった。ましてや当時、不採算路線を廃止せよという提案は報じられなかった。

 サーベラスと西武鉄道の関係についておさらいすると、西武鉄道は2004年に有価証券報告書の虚偽記載を公表し、上場廃止となった。当時の株主や、株主だった同業の鉄道会社の業績も揺るがすほどの事件であり、これを立て直すために西武鉄道は持株会社制に移行。資本を増強するために選んだパートナーがサーベラスだった。サーベラスとしては再上場する場合の利益が目当てであり、継続的に鉄道事業を続ける意志はないだろう。

 今回、サーベラスが実施する西武ホールディングス株の公開買付(TOB)の説明書に、両者の関係の起因が説明されている。西武鉄道ホールディングスは、資本提携先の選定において、企業価値に対する高い評価や企業再生の取り組み実績、事業特性への十分な理解などとともに「鉄道事業の公共性、従業員・地域経済との良好な関係に対する高い意識」を考慮したそうだ。その結果が鉄道路線廃止要求というなら、もうこの資本提携は最初から破たんしていたのではないか。サーベラスの鉄道廃止要求に比べたら、村上ファンドはまだお金に正直なだけだった。

多摩川線

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