コラム
» 2013年03月22日 08時01分 UPDATE

杉山淳一の時事日想:“誰得”なの? 西武鉄道の「赤字線切り」が始まっている (1/4)

旧国鉄の路線を引き継いだJR旅客各社は赤字ローカル線も継承している。一方、大手私鉄は創業当初より沿線開発との相乗効果を得ており、もうかっている印象がある。しかし実態は厳しく、「赤字線切り」はすでに始まっている。

[杉山淳一,Business Media 誠]

杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)

1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。


 まさか、と思うニュース。西武鉄道で赤字ローカル線廃止問題が浮上したという。リストに載った路線は山口線、西武秩父線、多摩川線とのこと。西武鉄道の稼ぎ頭といえば池袋線、新宿線という本線系統であり、山口線、西武秩父線、多摩川線は確かにローカル線といえなくもない。しかし、どれも西武鉄道にとって、そして沿線の人々にとって重要な路線である。

 山口線は西武遊園地と西武球場を結ぶ新交通システムで、西武グループを代表するレジャー施設を結ぶ回遊路を形成する。多摩川線は西武鉄道の路線網から隔離されているとはいえ、JR中央線の武蔵境駅をターミナルとする通勤通学路線だ。多磨霊園や多摩川競艇場もあり、手堅い特需輸送需要もある。

 西武秩父線は吾野(あがの)駅と西武秩父駅を結ぶ末端路線だ。飯能から秩父までと思っている人も多いと思うが、実は建設の経緯として、吾野までが池袋線として開業し、そこから秩父まで延長する路線として西武秩父線が建設された。当初はセメント輸送の目的もあり、貨物列車も運行されていた。現在は貨物列車が廃止され、沿線人口も少なく、収支は悪化しているのかもしれない。しかし、この路線は西武鉄道の看板列車、レッドアロー「ちちぶ号」が走っている。小田急の箱根、東武の日光には及ばないものの、西武秩父線は西武鉄道の観光輸送の柱を担っている。

 3つの路線とも、収支は厳しい状態にある。しかし、西武鉄道の事業全体で補えるレベルだろうし、なにより沿線のグループ関連事業を支えている路線だ。ひとくちに赤字だから廃止したい、と判断できる事案ではない。もちろん西武鉄道や西武ホールディングスに廃止の意向はない。

yd_sugiyama1.jpg 西武秩父線のエース「レッドアロー」。サーベラス側は特急料金の値上げも提案している
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