なぜ「監獄ビジネス」が拡大しているのか――背景にあるのは窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年03月19日 08時05分 公開
[窪田順生,Business Media 誠]
かつて「闇社会の守護神」と呼ばれた、元弁護士の田中森一氏

 本日(3月19日)発売の『刑務所のタブー』(宝島社)というムック本のなかで、田中森一元弁護士へのインタビューをさせてもらった。

 田中氏といえば、暴力団組長や地上げ王などの顧問をつとめ、イトマン事件で知られる許永中とも親交が深いことから、「闇社会の守護神」などといわれた弁護士だが、その前は「特捜エース」と呼ばれる検事でもあった。日本の司法の表と裏を知り尽くした彼が、「塀の中」で何を見て、どう感じたのかというのは、個人的にはかなり興味深かった。例えば、前にも書いた「受刑者の9割以上が自分のことを冤罪だと信じている(関連記事)」ということもそうだ。

 田中氏がそのように主張するのには根拠がある。「田中森一」の名は受刑者たちの間でも当然知られており、収監されてからというもの自由時間などに「話を聞いてください」という受刑者が殺到したのだ。要するに、5年にわたって、塀の中で「行列のできる法律相談所」をした体験からだった。田中氏は言う。

 ほとんどはプロの目から見ると冤罪ではない。法律の素人だからしょうがないが、みんな「罪」と「責任の代償」がごちゃまぜになっている。ただ、共通しているのはみんな「納得していない」ということだ。

 罪を認めないので反省の土壌がない。要は「矯正の場」になっていないのだ。多くの犯罪者たちを取材してきた身からすると、すごく共感できる“刑務所あるある”だが、実はそれよりも印象的だったのは、塀の中に溢れ返る「ボケ老人」の話だ。

 自分がアパートにいるものだと思い込んで毎朝、「今月の家賃を待ってくれ」と言う者。「今から盆栽に水をやらないと枯れるから電車で帰る」と電車賃を借りにくる者……そんな高齢者たちの受刑者が想像していた以上に多かったというのだ。

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