新卒採用面接は、なぜ何回もくり返し行われるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/4 ページ)

» 2013年03月18日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

 しかし、ここまで読んで疑問に感じた人も少なくないと思います。面接の多くは会議室や応接室で行われます。密室で、質問されて回答して、質問して回答されるという、いわば「会社の日常」とはまったくかけ離れた面接という行為で動機形成することが、目的にふさわしい手段なのかと。実際、この手の手段によって動機形成された就活生の話を聞いていると「お話をさせてもらった社員のみなさんの人柄に、大きな魅力を感じました」とか「いきいきと働いている社員さんをみて、自分もそうなりたいと思いました」と発言します。

 そう、採用担当者たちにしてみれば「してやったり」の反応です。働いている場所を見たわけでもないのに、自分もいきいきと働けるかも知れないと、そこに入社する動機形成ができているのですから。実際の職場を見学させることは、採用担当者たちにとっては骨が折れる仕事です。日常の業務を止めて新卒採用に現場を協力させるのは、至難の業。そのため、日常業務の邪魔にならない隔離された場所を使い、社員のキャラクターだけで簡単に魅力ある企業と思わせることができる面接は、重宝するのです。

 ただし弊害もあります。密室で魅力的な社員と接することで、入社したいと動機形成されてしまった就活生の中には、働き始めると「思っていたのとは違う職場」のギャップに悩まされ、なおかつ「いきいきと働いている社員ばかりではない」というきわめて当然な現実を目の当たりにします。その結果、早期離職という不幸な事態に陥ってしまう人たちも少なからずいるのです。

新卒採用における目的と手段を再整理する時期に来ている

 面接という仕組み自体は、なにも日本に限ったことではありません。世界中の企業で行われている一般的な方法です。難問を提示してその人の能力をあぶり出そうとする企業もたくさんありますが(Googleの面接などは有名ですね)、それらの事例の多くは、面接を実施する企業による事前の準備が徹底しています。面接を担当する人間もそれ相応の訓練を受けています。また、実際に働く現場の上司が面接をし、社員との相性を見極める仕組みとして利用されることがほとんど。日本の新卒採用のような動機形成の側面は、ほとんどありません。

 海外の企業が動機形成を行う仕組みとしては、社員と会って話をする機会(=アセスメントの目的は薄い)を作ったり、自社の魅力を伝えることを目的とした最新技術などを紹介する小イベントを開催したりしています。そう、日本の企業は「会社説明会」や「先輩訪問」という形で、同様のことをやっているのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.