ローカル路線を巡って近鉄と四日市市が泥沼の対立、決断はこの夏杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)

» 2013年03月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

近鉄はBRTを提案「2013年までに決断してほしい」

 近鉄によると、内部線・八王子線の年間輸送人員のピークは1970年(昭和45年)で約722万人。2011年(平成23年)はその半分の約363万人。毎年3億円程度の赤字になっているという。「赤字だからすぐにでも廃止したい」が本音だろうが、減ったとはいえ363万人の輸送には責任がある。この機能は維持していきたいという。

 ただし「鉄道ではダメで、BRTにしたい」これが近鉄からの提案だ。2012年8月24日のプレスリリースで明らかになった。そこでは「来年夏までに今後の方針を固めてほしい」という。2013年夏という期限は、現在の使用車両の老朽化を考慮したものらしい。「BRT化を了承して」ではなく、「方針を決めて」という文言になっている理由は、鉄道としての存続や廃止に含みを持たせている。つまり、近鉄と切り離して四日市市が運営するか、第三セクターとするか、廃止してバス転換するという方向もあるわけだ。

 その判断を、近鉄は四日市市に委ねた。ただし、委ねたといっても厳格な線引きはある。近鉄は鉄道路線として続けるつもりはないのだ。四日市市からはBRT化反対、鉄道運営を維持してほしいという声しか出てこない。そこで近鉄側は2012年12月に、改めてBRT化の方針を提案。そこには「鉄道の維持にはコストがかかる。鉄道である限り、誰かが赤字を負担する必要がある」と明言している。

 どういった形であれ、鉄道として残すならお金がかかる。四日市市にその覚悟はあるか。近鉄が四日市市に問いただした格好だ。

八王子線

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