ローカル路線を巡って近鉄と四日市市が泥沼の対立、決断はこの夏杉山淳一の時事日想(2/6 ページ)

» 2013年03月15日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

近鉄内部線・八王子線とは

西日野行きの通学列車

 内部線と八王子線は、三重県四日市市で運行されている路線だ。近鉄内部線は近鉄四日市と内部を結ぶ5.7キロメートルの路線。八王子線は内部線の日永駅(ひながえき)から分岐して、ひと駅先の西日野を結ぶ1.3キロメートル路線である。近鉄のターミナル、大阪・名古屋・京都から見れば辺境のローカル線。しかし四日市市は人口30万人超の都市だ。内部線と八王子線は過疎地のローカル線ではない。都市近郊路線と言える。

 この路線はもともと地元資本が軽便鉄道(けいべんてつどう:一般的な鉄道よりも規格が低く、安く造られた鉄道)の規格で建設し、1965年(昭和40年)に近鉄が合併して現在に至っている。だから、大手私鉄第1位の路線網を持つ近鉄としては特殊な路線である。線路幅が狭いナローゲージで、電車の大きさも小ぶりだし、使用する電圧も低い。趣味的にはかわいい姿である。が、なにぶん半数は昭和20年代に造られた古い車両だ。メンテナンスが大変そうだ。

 電車が小さいといっても車内は都営地下鉄大江戸線くらいの広さがある。車体の長さは15メートルで、これも大江戸線の16メートルに近い。関西の鉄道では大阪市営地下鉄の長堀鶴見緑地線や今里筋線のサイズに相当する。もっとも、内部線・八王子線のほうが天井が高いから広く感じるし、外見も細長く見える。その電車が2両または3両連結で運行している。

 内部線・八王子線の運行頻度はともに1時間に2往復程度。通勤時間帯は増発される。また、八王子線も近鉄四日市駅まで直通するため、近鉄四日市駅は日中は15分おき、通勤通学時間帯は約10分おきに発着する。実際に乗ってみると、通勤通学時間帯は座席が全て埋まり、入り口付近に立ち客がある程度の混雑ぶり。夕方の下りも座席が埋まる。夕方上りはガラガラとはいえ、都市近郊鉄道の典型的な輸送状況に見える。

 単線で、ほとんどの駅を無人化して、電車もワンマン運転にして、これだけお客さんが乗っても赤字とは……鉄道とはいかにお金がかかり、利益の薄い事業だろう。

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