上記の話を聞く1カ月前、同じく退職したいと考えている別の女性から、似たような相談を受けていました。その女性は「上司の書くブログの内容に耐えられないから退職を決意した」というのです。
その上司は、ビジネスパーソンに役立つ情報を中心にして、働くということやビジネスパーソンとしての有り様を「こうあるべきだ」と、日々つづっていました。どこかのビジネスハウツー本にでも書かれていそうな内容で、同業者の間でもよく読まれていたようなのです。彼女も部下として配属された当初は、そのブログを熱心に読んでいたといいます。
しかしある日、彼女は「もしかして、これは私のことを書いているのでは?」と気付きます。それは“部下が失敗しても、最初に叱るのではなく、原因を気づかせるまで待つ。その後、本人の気付きがあってから、一緒に再発を防止するのが部下を成長させる”という内容の話でした。
実際には彼女は失敗した直後にひどく怒られて、その後は相談も指導もなかったといいます。しかしブログ上で描かれているのは「部下の成長を優しく見守る温かい上司」という自画像。それ以降、注意してブログを見ていると、自分が次々に題材になっていることが分かりました。そして、実際に起こっていることとブログに書かれていることの乖離(かいり)に驚いたといいます。
「直接本人に言わないで、ブログに書いて終わり。しかもその内容のほとんどが、自分に都合の良い気づきや学びでまとめられています。そんな上司を尊敬して、一緒に仕事ができると思いますか?」
周囲は、当然尊敬の目で上司を見ていたそうです。いつも素晴らしいことを書いているのですから、当然ですよね。しかし部下は、その周囲の目にも耐えられなくなり、どんどん溝が深まっていきます。最終的に彼女は、上司がネット上で書いているものには一切目を通さないと決めたのですが、それでも周囲がそれらの話題に触れてくる。それにも我慢ができなくなり、結果的に「会社を辞めたい、せめて異動したい」と考えるようになったというのです。
上司なんてどうでもいい、尊敬なんてできなくてもいい。仕事さえできれば十分――そんな風にドライに考えている部下が増えていると思っていたので、彼女たちの「上司が尊敬できなくなった」から会社を辞めたいという視点は、とても新鮮な気がしたのです。
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