彼女たちが上司を尊敬できなくなったワケサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(1/3 ページ)

» 2013年03月11日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

連載「就活・転職のフシギ発見!」とは?

 就活や転職、若年層を中心としたキャリアについて、仕事柄仕方なく詳しくなったサカタカツミが、その現場で起きている「当事者たちが気付いていないフシギ」について、誰にでもスルッと理解できるように解説するコラム。

 使えない部下が毎年出現するのはなぜなのか? その理由も、垣間見えるはずです。

著者プロフィール:サカタカツミ

 クリエイティブディレクター。1967年生まれ。長年、就職や転職、キャリアに関するサービスのプロデュースやブレーンを務めている関係で、就活や転職には詳しい。直近でプロデュースしたサイトは「CodeIQ」。著書に『こんなことは誰でも知っている! 会社のオキテ』『就職のオキテ』がある。

 個人的に書いている就活生向けのブログは、なぜか採用担当者たちから「読んでいて心が痛くなります。ホントに辛いです」という評価を受けている。Twitterアカウントは@KatsumiSakata


誠編集部の関係者には複数名の岡田がいる

 本気と書いてマジと読むイベントの打ち合わせを、編集長の吉岡綾乃さんと打ち合わせをしていたときのことです。「『なぜ吉岡綾乃は憤っているのか』というイベントタイトルがいいんじゃないか」と私が提示したところ「サカタさん、それじゃまるで私、しょっちゅう怒っている人みたいじゃないですか」と、思いっきり否定されてしまいました。

 そのやり取りを横で聞いていた、同じく誠編集部の編集記者であり、名字よりも下の名前で気軽に呼んでほしいと思っている岡田大助さんは「うちの編集長は怒っても、カレーを食べたら忘れちゃう人だから、ある意味で楽ですよ」と、フォローにならない突っ込みを入れました。「その発言は部下としてダメじゃないのか大助」と、私は心の中で叫びながら、最近立て続けに聞いた「退職理由:上司が尊敬できなくなったから」という話を思い出したのです。

おいしいカレーを食べたら忘れちゃう?(写真と本文は関係ありません)

彼女が上司を尊敬できなくなった、意外な瞬間

 先日、ある女性と食事をしていて「今の会社を辞めたい」という相談を受けました。仕事柄、こういう相談は慣れていますし、始めはハイハイお聞きしますよという感じだったのですが、退職したい理由を聞いて少し身を乗り出してしまいました。なぜならその少し前に、別の女性から聞いた「退職したい理由」と酷似していたからです。

 その理由とは「上司が尊敬できなくなった」から。しかも、尊敬できなくなる経緯がそっくりなのです。

 彼女がいうには、上司は尊敬できる対象であってほしいし、そういう対象としていつも見ている。日常、接している分にはまったく問題ないと思っていたけれども、TwitterやFacebookなどでつながると、その日常とは違う部分が垣間見えてしまう。その中で「あ、この人は尊敬できない」と思う要素がたくさん出てきてしまったのだというのです。

 ソーシャルネットワークツールが発達して、誰もがネットワークでつながるようになった途端、今まで見えなかった部分、見せたくなかった部分、見たくなかった部分が「可視化」されるようになったのです。その弊害が「転職」という、企業にとってはありがたくない事象にまで発展してしまうとは、私は思いもよりませんでした。

 「愚痴をいったり、悪口を書いたりするのは、仕方ないことかもしれません。書いているのは個人だし、好きなことを書くのも自由だし。ただ、会社名を堂々と掲げている人が、部下への不満を述べたり、よその企業の担当者を非難したりするのって、あり得ないと思います」

 かつては、そういう側面があったとしても、部下にはなかなか見えませんでした。今だって、匿名アカウントでつぶやいたり、特定の人しか見られない設定にしておければ、時に自分が毒を吐いたり悪口をいってガス抜きをしている、いわば「ごくフツーの人」であることを、部下に悟られないで済むはずです。

 しかし居酒屋で愚痴を言うごとく、ネット上に部下の不平を垂れ流してしまう無自覚な人も少なくありません。それが退職理由になるというのは、時代だなあという言葉でも片付けられそうな気がしますが、それ以前に聞いた別の女性の話を組み合わせると、これは問題かもしれないと、改めて考えさせられるのです。

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