なぜ日露関係は重要なのか藤田正美の時事日想(2/2 ページ)

» 2013年03月11日 08時00分 公開
[藤田正美,Business Media 誠]
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 そのロシア。資源大国であるロシアは、資源の価格と輸出量が国力を左右する。プーチン大統領が誕生した2000年からの8年、ロシアは資源価格の高騰を背景に国の経済が安定し、前世紀末のデフォルトを起こした状態からあっという間に抜け出した。プーチン大統領の8年間、強権的な政治手法にもかかわらず、国内での支持率が高かったのは、まさに資源のおかげだった。

 しかし、やや強引とも言える資源貿易の「国家管理」がたたって、ロシアは欧州への輸出が伸びなくなっている。欧州がエネルギーのロシア依存を嫌うようになったからだ。そのためロシアは資源の輸出を増やすには東側で売るしかない。相手は、中国と日本だ。

 資源をめぐる世界の情勢も大きく動いている。米国を中心とするシェール革命だ。これによって米国がエネルギーの輸入国から輸出国に大変貌を遂げようとしている。このため、資源価格が上がってくれればというロシアの期待は消え去ろうとしている(ただし資源価格が暴落するとは思えない)。

 それだけに何としても、ロシアは東側の開発を進めなければならない。もちろん中国はロシアからエネルギーを買うのだが、ロシアは東側ですべてを中国に売るのは避けたい。それはロシアの中国依存を生み出すからである。もちろん、人口が多くて世界第2位の経済大国である中国と長い国境線を接しているという地政学的条件もある。中国を警戒するロシアは、東側で売るエネルギーを日本に買ってもらいたいと考えている。

 エネルギーの一部をロシアから輸入することは、日本にとって南シナ海への依然度が低下することを意味する。ロシアからパイプラインを敷設するという構想もあるし、LNGという形で輸送するという構想もある。電力という形で輸入することも可能だ。

 こういう形で日ロ間の経済協力を進めるための第一歩は平和条約の締結である。中国にとってみれば、日ロが平和条約を結んでいないという状況が望ましい。逆に言えば、日ロがここで連携を強めることは、中国へのけん制になるということだ。

 その第一歩が安倍首相の訪ロだ。この首脳会談を成功させられるかどうか、そこには安倍首相の命運だけでなく、日本の命運もかかっている。

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