地震対策として注目されている、「制震」ってナニ?(3/3 ページ)

» 2013年03月21日 00時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]
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阪神・淡路大震災の教訓を生かし

 ちなみに、少し前までは制震システムというと、どちらかといえばビルや橋梁といった大規模な建造物向けの技術だと見なされていた。しかし、先に紹介したような一般住宅向けの製品が数多く開発・販売されるようになった今、制震システムを取り入れた住宅建設に積極的に取り組むハウスメーカーや工務店が増えてきている。その1社が、神戸市で50年以上に渡って建設業を営む伊田工務店だ。

 同社の社長を務める伊田昌弘氏が制震装置に関心を抱くきっかけになったのは、1995年に発生した阪神・淡路大震災だったという。

 「あの震災では、私の周囲だけでも何人もの方が不幸にも亡くなられたり、ケガをされたりしました。そうした状況を目の当たりにして、住宅の地震対策の重要性についてあらためて認識させられました。幸いにも、弊社が手掛けた住宅は1件も倒壊することはなかったのですが、そのほとんどは先代である私の父親の代に建てられたものです。やはり私の代でも同じく、地震で決して人が亡くなることがない家を造らねばならないという思いを強くしました」(伊田氏)

 そこで伊田氏が注目したのが、一般木造住宅用の制震装置だったのだが、当時はまだ価格が数百万円もしたため、そう簡単に導入できるものではなかった。それが近年の低価格製品の登場で、一気に身近な存在になったという。

 「弊社では制震装置として住友ゴムのMIRAIEを採用しているのですが、とてもこなれた価格なので、十分に現実的なコストで導入が可能になりました。また、アンカーボルトと接合するというMIRAIEの構造は、建築設計を手掛ける者から見ても安心感が高いと思います。ただしその分、設置にはある程度高い技術が必要になるのですが、そこは工務店側がクリアすべき問題でしょう」

 最近では東日本大震災の影響もあり、施主の地震対策に対する関心はより一層高まっているという。そうしたニーズに応え、安心して住める住宅を提供していくためにも、制震装置は今後ますます重要性を増していくだろうと伊田氏は言う。

 「動物は普通、天敵や外敵から身を守るために巣に逃げ込みますよね。人間もそれと同じく、もし地震が来たら『とにかく家に逃げ込めば安全だ!』というふうにしていきたいですね。そのためにも、制震装置を使った『安心できる家作り』を今後も積極的に進めていきたいと考えています」

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