鉄道運賃値上げの本番は2014年4月杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)

» 2013年03月01日 08時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

JRは運賃を上げていいころ?

 企業が利益を上げるために割引をやめたり、サービスのメニューを増やしたり、という行動は当然のことだ。むしろJRグループはこれまで、基本運賃を値上げせずにがんばってきた。さかのぼれば、最後の運賃値上げは1997年で、それも消費税の改定ぶんを上乗せするのみ。消費税率の2%上昇に対して1.9%の値上げだった。

 これを含めて、1987年にJR旅客各社が発足して以降、運賃値上げは少ない。JR東日本、JR東海、JR西日本の3社の値上げは2回(1992年、1997年)、理由は消費税の導入と税率改定ぶんの上乗せだった。JR北海道、四国、九州は3回で、前出の消費税率絡みのほかに、経営悪化のための値上げが1度(1996年)あるだけ。本州3社は消費税を転嫁しただけだから、実質的には発足以降、26年間も運賃が据え置かれたといえる。バブル崩壊以降の不景気、阪神淡路大震災、リーマンショック、東日本大震災、原油高などもあった中で、かなり良心的といえよう。

 しかし、そろそろJRグループは運賃を値上げしてもいいのではないか。運賃が値上げされない中で、何とかして売り上げを増やしたい。その努力が割引きっぷの見直しやグリーン車のテコ入れだともいえそうだ。それでも、少子化が予測される状況の中で、小さな施策には限界がある。線路設備の更新も必要で、被災地の線路の復旧費用もかかる。運賃値上げという伝家の宝刀をぬけば、大幅な増収となり、問題解決に前進できる。“副業”の躍進が目立つJR各社だが、鉄道運賃を適正化し、鉄道事業で利益を生むという基盤をしっかりつくってほしい。本業でしっかり稼ぎ、ローカル線の維持、被災路線の復旧を進めてもらいたい。

 そのために基本運賃を上げ、その代わり割引きっぷを増やして旅行需要を喚起し、トータルで増収にもっていく。せめて通勤定期の割引率の変更でもいい。通勤定期は割引率が大きいからだ。ただし、日本では通勤定期は企業負担という事例が多いから、経済団体が反発しそうだ。公平性を考慮すると、やはり全体的な運賃値上げとなるだろう。

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