選挙が近づくと出版社が笑う? “おいしい仕事”の裏側相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年02月28日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 冒頭で触れた通り、7月の参院選を控えていることから、選挙に立候補予定の多数の政治家が支援者向けに書籍を出そうと計画中なのだとか。また、参院選の候補者を応援する意味合いから、与野党のベテランから新人まで、政策関連の本を多数出し、党の支持者層拡大を図る狙いもあるという。

 多くの読者が想像する通り、衆参問わず国会議員は多忙だ。本会議への出席のほか、所属する委員会の審議もみっちりスケジュールが組まれている。早朝からの勉強会、夜は支持者との会食や派閥のミーティング、週末は選挙区に戻っての地元活動……。当然のことながら、書籍の執筆に時間を割ける議員はごくごく少数派だ。

 そこで、ゴーストライターの需要が生まれるというわけだ。議員秘書や支援者から草案をもらい、数回議員と面談した上で執筆を進める、というのがおいしい仕事の内訳だ。

 昨今、ノンフィクション系の媒体が激減、ネット系メディアの原稿料が極端に安いというのが業界の通例。一方、ライターの数だけは減らないという矛盾を抱えるモノカキ業界だけに、かつて世話になった編プロの幹部が気を遣って声をかけてくれた、というのが事のいきさつだ。ちなみにギャラは、週刊誌の特集ページの数倍。ネットメディアのギャラと比較するとその差はさらに広がる。取材相手とトラブルを起こし、訴訟沙汰に発展するリスクはゼロ、その上、効率的に書けてギャラも良いという点がおいしい仕事の特徴だ。

 幸い、私は小説や漫画原作の仕事が来年末までびっしりと詰まっていることから、お誘いは固辞したが、記者を辞めた直後で仕事に飢えていた時期ならば、真っ先に飛びついていたはずだ。

7月の参院選を前に、ゴーストライターの需要が生まれるという(写真と本文は関係ありません)

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