邦高洋低化するエンタメ業界アニメビジネスの今(2/3 ページ)

» 2013年02月26日 08時00分 公開
[増田弘道,Business Media 誠]

アニメに見る邦高洋低

 映画の邦高洋低傾向は、劇場アニメにおいて特に著しい。次図は2000年代の劇場アニメの洋邦シェアの推移だが、見ての通り日本の劇場アニメが圧倒的に強い。海外劇場アニメのシェアが高い年もあるが、いずれもジブリ作品がなく、ピクサー作品がヒットした年である(2002年は『モンスターズ・インク』、2003年は『ファインデング・ニモ』、2005年は『Mr.インクレディブル』など)。

 2000年以降13年間の平均シェアは海外劇場アニメ23.7%に対し、日本劇場アニメは76.3%と圧倒的。そして2012年は『千と千尋の神隠し』が大ヒットした2001年(88.9%)に次ぐ、87.1%という高い比率を記録した。ジブリ作品がなかったにもかかわらず、これほどのシェアを獲得できたのは、定番3作品(ドラえもん、コナン、ポケモン)のほか、細田守監督作品、劇場版エヴァ、ワンピースがそろい踏みできたからである。

 また、劇場アニメだけでなくテレビアニメでも、地上波に限って言えば、メインプロダクションを日本が担当する日米合作スタイルの『超ロボット生命体 トランスフォーマー プライム』などを除いて、国産アニメの比率がほぼ100%に近い状況となっている。

劇場アニメの洋邦アニメシェア(映画製作社連盟発表データ、日本動画協会発表データなどをもとに筆者作成。ただし、2012年のアニメ興収については1〜12月を対象としており、まだ興業中で数字が確定していない作品があるので最終ではない)

 アニメの邦高洋低はビデオグラム(VHSテープやDVD、Blu-ray Discなど)のシェアを見ると、より鮮明である。

 次図は2001〜2011年の日本アニメと海外アニメのシェアだが、海外アニメはジブリ作品のリリースがなかった2004年に『ファインディング・ニモ』のビデオが出たことで22%というシェアを記録した以外、7〜15%のレンジにある。特に、ここ6年は10%以下で推移しており、パッケージにおける日本アニメの強さが改めて浮き彫りになっている。

ビデオグラム洋邦アニメシェア(日本映像ソフト協会データをもとに筆者作成)

 このアニメにおける邦高トレンドは今後も続くものと思われる。地上波テレビについては、マンガやゲーム、商品と一体化したキッズ・ファミリーアニメ、日本にしかない深夜アニメのことを考えると、日本アニメの優位性は揺るぎそうもない。

 映画で言えば、ドラえもん、クレヨンしんちゃん、名探偵コナン、ポケモン、プリキュア、ワンピースといった定番テレビアニメ劇場版を軸として、ジブリ作品、エヴァ劇場版、細田守監督作品が安定した強さを見せており、最近では定番以外のテレビ作品の劇場版も増えつつある。

 また、アニメに限らず映画全体に言えることだが、世界的に大ヒットしたハリウッド作品でも日本では当たらないという傾向も邦高洋低現象を後押ししている。海外アニメが上向くためにはピクサーに頼るところが大きいが、2012年の『メリダとおそろしの森』では屈辱的ともいえる9億5000万円という興収に終わっている(ちなみに今年のアカデミー長編アニメ映画賞作品である)。

 今年は“鉄板”であるモンスターズ・インクの前日譚『モンスターズ・ユニバーシティ』が公開されるので、数字は大きく回復すると思われるものの、邦画にはジブリ作品が控えているのでシェアの回復は難しいのではないだろうか。

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