コラム
» 2013年02月26日 08時00分 UPDATE

法然上人から学ぶ未来経営 (1/2)

世の中が混沌としていた平安時代末期に法然が説いた「共生」という概念。筆者はこの言葉は今後の企業経営を考える上でのヒントにもなるという。

[石塚しのぶ,Business Media 誠]

著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表。南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る〜コア・バリュー経営〜」(2013年3月発売予定)、 「ザッポスの奇跡 改訂版」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。


 冒頭から唐突で恐縮ですが、私は葛飾のお寺の息子として育ちました。祖父は法然上人の教えを英訳し、初めて海外に紹介した人でした。戦前に出版されたその『HONEN』という本は955ページにも及ぶ分厚いもので、私もその一冊を形見のようにして大切に持っています。

 そんな家系に生まれましたが、別にお寺を継ぐわけでもなく若くして渡米してしまった私は、仏教に特別な興味も持たず、つい最近まで法然上人の教えに触れることもなく過ごしてきました。しかし、2012年は法然上人の没後800年を記念する行事が世界各地で行われ、私もふとしたきっかけでロサンゼルスで行われたイベントに参加してきました。

 そこで聴いた講話は、法然上人の生涯や教えについて分かりやすく解説するものでした。大変話の上手なスピーカーで、私のように仏教の基礎知識のない者の頭にもすんなり入ってくるように丁寧に説明をしてくれました。とても勉強になったので、その講話を書き起こしたものをもらって帰ってきましたが、新著『未来企業は共に夢を見る』をいよいよ執筆する段になり、ひょんなことからその講話を読み返していたところ、法然上人と未来企業の考え方に多くの共通性があることに気づかされ、はっとさせられたのです。

 世の中がまさしく混沌としていた平安時代末期に、「『ナムアミダブツ』と唱えれば必ず来世は極楽に生まれることができる」と説いた法然は、仏教の民主化を進めた革命児でした。その基盤となった教えは「万人平等救済・共生・非暴力」でした。かいつまんでいえば、「人は独りきりで生きているわけではない。他の人や、社会や、自然との係わり合いによって生かされている。他者を助けることは、自らを助けることだ」ということになります。

 私は、未来企業の経営に対する考え方の根本にあるのは、この「共生(ともいき)」の原則に共通するものだと思うのです。

 ちなみに、先に書いた文章の中の「人」という言葉を、「企業」という言葉で置き換えてみると、こうなります。

 「企業は独りきりで生きているわけではない。他の企業や、社会や、自然との係わり合いによって生かされている。他者を助けることは、自らを助けることだ」

 「市場」を限りあるパイに見立てて、各々がその取り分を巡って争うという「ゼロ・サム」の思想のもとでは、企業は利己的になり、自らの利益確保に偏ったフォーカスを置きがちになります。自分さえよければいい。顧客をだましてもいいし、事業活動が原因で自然を破壊するようなことになっても仕方がない、という考え方です。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ

マーケット解説

- PR -

ITmedia 総力特集