「ソースコード」「デリバティブ」――この程度の専門用語も説明できない、大手メディアの脆弱性相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年02月21日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 先週の当欄で触れたPCの遠隔操作事件(関連記事)。成り行きを巡る詳細は他稿に譲るとして、事件報道の中で生じた“珍事”にスポットを当てる。一部在京紙が容疑者逮捕の決め手となった要因として、「ソースコード」という言葉を誤解したまま報じ、SNSやネットの掲示板などで読者から嘲笑される一幕があった。

 私は元大手マスコミの記者。メディア界がいかに「専門用語」に弱いかを知る身である。実はIT関連以外の話題でも、他にも同じような事柄がゴロゴロあるのだ。専門用語を扱う難しさに触れる。 

遠隔操作事件で“珍事”

 誤認逮捕を生んだ警察や検察を嘲笑ったPCの遠隔操作事件。先に容疑者が逮捕されたことは多くの読者がご存じの通り(2月19日現在、容疑者は依然容疑を否認中)。

 捜査陣がどのようにして容疑者の存在をあぶり出したのか――主要メディアは連日、詳細を報じた。多くのメディアは、容疑者が神奈川県の江ノ島の猫にメモリーカード付きの首輪を着けたことに触れ、この際、近隣の防犯カメラに本人が映り込んだことが決定打となったと伝えた。問題は、このあとだった。ネットの掲示板などで槍玉に上がったのは、2月11日付の朝日新聞朝刊の記事だ。

 首輪に仕込まれたメモリーカードには、「ソースコード」と呼ばれる遠隔操作ウイルスのプログラムが記録されていた

 本稿読者の多くに詳細な説明の必要はないだろう。ソースコードは、コンピュータのプログラムや、その文字列のことを指す。コード自体が問題の遠隔操作ウイルスを指すわけではない。

朝日新聞の記事がネットの掲示板などで槍玉に上がった(写真と本文は関係ありません)
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