コラム
» 2013年02月19日 08時00分 UPDATE

「会社は終わった」論にひと言、もの申す (1/2)

「フリー・エージェント」や「ノマド」と、「会社」という組織。「あちらを立てればこちらが立たず……」というものでもない。「個」が活躍できる時代だからこそ、今こそ、組織の存在意義が見直されるべき時。

[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表。南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る〜コア・バリュー経営〜」(2013年3月発売予定)、 「ザッポスの奇跡 改訂版」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。


 『モチベーション3.0』の著者として知られる米国のジャーナリスト、ダニエル・ピンクは、1997年の大晦日に『フリー・エージェント・ネイション』と題する記事を米ビジネス誌に寄稿しています(注:のちに同名の本が出版された)。

 特定の組織に所属せずに働く人を、ピンクは「フリー・エージェント」と定義し、「アメリカ合衆国には1400万の自営業者と830万のフリーランサー、230万の派遣労働者、占めて約2500万の『フリー・エージェント』が存在し、これはアメリカの就労人口の16%にあたる」と述べました。記事の中でピンクは、今後はこのような「所属」にとらわれない働き方が主流になっていくだろうと予言しましたが、それから15年が経過した今日、恐らくこの数値はもっと大きいものになっていると思います。

 昨今では、「フリー・エージェント」に代わり、特に日本では「ノマド・ワーカー」という言葉が取り沙汰されています。「ノマド」は「nomad(遊牧民)」。オリジナルには、「会社、自宅に関わらず、『オフィス』という物理的な場所にとらわれず仕事をする人」という意味らしいですから、自営業であるか勤め人であるかという「所属」は関係ありません。米国でも、会社に勤めてはいるが自宅勤務する人やスタバのようなカフェなど公共の場で働く人が増えていて、これらは「テレワーカー」や「リモートワーカー」などと呼ばれています。

 「ノマド」はもともとは、「ワークスタイル」を表現する言葉であるようですが、最近では、これが転じて「生き方」や「哲学」などを表現する言葉として用いられているようです。一部では、「ノマド」が「組織に縛られない働き方=新しい時代の生き方」として礼賛され、そこからさらに飛躍して、「『会社』で働くこと自体が時代遅れだ」などという意味のことを唱えている人まで出てきています。

 「フリーランス」というのは昔からあった働き方ですし、秀でた才能や特殊な技能を持つ人が自ら看板を立て、自らのルールで働くというのはそれなりに正当な生き方だと思います。

 しかし、これらのワーク(ライフ)スタイルが、「組織に属さない」ことに強調をおいて論じられるたびに、私としては大きな違和感と抵抗を感じます。そもそも、「フリーエージェント」や「ノマドワーカー」というワーク(ライフ)スタイルが実行可能になったのは、ネットを主とした新しいコミュニケーション媒体の普及のおかげで個人が自分の能力や考え方を広く世の中に発信し、それに共感したり、価値を見出してくれる組織を見つけることができるようになったからです。

 組織やグループやチームが重要でなくなったわけではないのです。本来、「組織」とは、複数の人たちが集まり、「共通の目標」を達成するために作られたメカニズムやシステムです。むしろ、今日では、「組織」の重要性がますます高まってきているように私には思えます。

 優れた組織は、個人の力を強調・補足して数十倍、数百倍にも拡張しつつ、統括の仕組みを通して複数の人を束ねることによって、個人では到底成し遂げられない大きな夢や目標を実現します。それが組織の強みなのです。資本力でも経営トップのカリスマでもなく、長い歴史に依存したブランド力でもない。真の「組織力」を武器にした未来企業が無数に創出されるべき時代が来ていると私は思います。

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