コラム
» 2013年02月18日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:円安だけじゃダメ、G20を乗り切った日本に必要なこと (1/2)

モスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議。最大の問題は急激に進んでいる円安に対して、どのようなアクションをとるかということ。しかし、結果は日本にとって都合の良い方向に進んでいるようだ。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 モスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議。話題の中心は日本だった。大胆な金融緩和が打ち出されたことで円が急激に安くなっていたからだ。米国は、景気が緩やかに回復の道をたどっているから、円安に目くじらを立てることはしない。次期財務長官に指名されているジャック・ルー氏も「強いドル政策を支持する」と米連邦議会上院の指名承認公聴会で語った。

 しかし欧州、とりわけユーロ圏はそうはいかない。円に対してユーロ高になれば、輸出競争力を失う。ユーロ圏の中で最も強いドイツですら、昨年第4四半期はマイナス成長になった。イタリアは総選挙の結果がどうなるかによって財政再建の道筋が変わってくる。それがユーロ圏に再び混乱をもたらすかもしれない。スペインもまだはっきりと光明が見えたわけではないし、ギリシャの混乱は続くだろう。そうであればユーロはなるべく安いに越したことはない。

 もちろん新興国も同様だ。円が安くなれば、日本企業の競争力が高くなり、そのあおりを食うのは彼らだからである。だからロシアも最初に日本の金融緩和に「異議あり」と言った。通貨が安かったために競争力を一段と上げていた韓国や中国も、円が安くなればそのツケは回ってくる。

 しかし、日本は何とか乗り切ったようだ。要するに金融緩和は、景気刺激によってデフレ脱却を目指したものであり、為替レートを引き下げることを目的にしたものではないと言い張ったのである(もっとも安倍首相のブレーンの一人である浜田宏一イェール大学名誉教授は、米国のFRBやEUのECBに比べて金融緩和で出遅れたから円高になったと主張しているのだから、本音は違うと言われても仕方がない)。

 この日本の政策はポール・クルーグマン教授なども理に適っているとするが、マーティン・フェルドシュタイン教授は「日本経済の潜在的な問題は金利上昇である」と指摘している(2月17日付日経新聞)。円安にして、インフレターゲットを定めて、長期金利は低いままに保たれるというのはまれなことだと教授は言う。

 もちろんインフレ率が2%になれば、当然のことながら10年国債の金利が0.7%台にとどまるはずもないだろう。目先がインフレになっている時に、インフレ率よりもはるかに低い金利で国にカネを貸すというのは理屈に合わない。当然、市場は金利の引き上げを要求し、流通市場では国債が売られることになる。そして国債を保有している金融機関では多額の評価損が発生する可能性がある。

 今年度末で1000兆円を超える借金を抱えることになる国も大変だ。1ポイント利回りが上がれば、机上の計算では10兆円の利払い増加ということになる(実際には急激にそれほど増えるわけではない)。10兆円といえば、消費税5%分に相当する。来年、再来年と消費税を引き上げても国債の利回りは1%上昇するだけで消えてしまう。

 ただ、緩やかなインフレであれば、その間にアジャストすることは可能だろうし、国の収入もインフレに伴って膨らむことが十分に期待できる。借金を増やさないようにできれば、インフレ分だけ負担も減るかもしれない。要は、どのような時間軸で事態が推移するかにかかっている。日本が持っている時間という資産がどのぐらいの速さで目減りするかというように言い換えてもいい。

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