「いかにお客さまに喜んでいただくか」は間違っている!?(1/2 ページ)

» 2013年02月15日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:松井拓己(まつい・たくみ)

ワクコンサルティング株式会社執行役員・チーフコンサルタント。名古屋工業大学産業戦略工学専攻修了後、大手化学工業品メーカーで商品企画開発に従事。その後、事業開発プロジェクトのプロジェクトリーダーとして、問題分析手法を活用した業務改革テーマの創出や、サービスサイエンスを取り入れた新規事業戦略立案に貢献。現在はサービスサイエンスおよび新規事業開発を中心に支援を行っている。


 最近ではほとんどの企業で、顧客満足向上やサービス向上についての取り組みがされるようになってきており、今ではCS(顧客満足)推進組織を設けている企業も珍しくなくなりました。当然のことながらサービス業のみならず、製造業や農業、金融業や公共サービスなど、あらゆる産業において顧客満足を高める活動は活発になってきています。早いところではもう何年も前から活動を継続しているケースも少なくありません。

 そんな中、「どうも効果が思ったように出ない」「何からどう進めたらよいか分からない」「現場任せで全社一丸になれない」など、苦戦されている声も聞こえてくるようになりました。

 そこで振り返ってみると、これまでのCS向上活動では「いかにお客さまに喜んでいただくか」という視点で議論されているケースが多いのではないでしょうか。実はこの「いかにお客さまに喜んでいただくか」という視点に、顧客満足向上活動の1つの落とし穴があるのです。

顧客満足の定義は?

 これまでとことん顧客満足向上について議論し、活動してきた企業でも、「顧客満足の定義は?」と聞かれると答えに困ってしまうケースが少なくありません。実はこの定義をしっかりと理解すると、極めて重要なポイントが浮かび上がります。それでは、顧客満足とは一体どういうものなのでしょうか。

 「顧客満足は、お客さまがサービスを受ける前に抱いている事前期待を、サービスを受けた後の実績評価が上回ったときに得られる」

 これが顧客満足の定義です。言われてみれば当たり前の内容で、イメージ通りという印象を持った人も多いのではないでしょうか。実はこの定義から、顧客満足についての2つの重要なポイントが浮かび上がってきます。

 1つ目は「顧客満足は絶対値ではない」ということです。つまり、事前期待と実績評価の「相対値」で顧客満足は決まるということです。

 そして2つ目が今回のテーマでもある「“いかにお客さまに喜んでいただくか”という視点は筋違いだった」ということです。これはどういうことかというと、「いかにお客さまに喜んでいただくか」という視点での活動は、そのほとんどが「実績評価をいかに大きくするか」しか議論できていないケースが非常に多いということです。

 しかし先ほどの顧客満足の定義から考えれば、顧客満足は事前期待と実績評価の相対値なので、「実績評価」だけに着目して議論するのは筋違いだと言えます。お客さまがどんな「事前期待」を持っているかをつかまなければ、顧客満足を得ることはできないのです。

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