PC遠隔操作事件の“実態解明”は? メディアが忘れた大事なこと相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2013年02月14日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『震える牛』(小学館)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)、『鋼の綻び』(徳間書店)、『血の轍』(幻冬舎)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 PCの遠隔操作事件に絡み、警視庁などの合同捜査本部は2月10日、都内の会社員を逮捕した。言うまでもなく、この事件では4人が誤認逮捕され、かつ真犯人を名乗る人物がマスコミを誘導する“劇場型犯罪”の様相を呈した。

 連休中の犯人逮捕時には、主要マスコミがこぞって捜査陣の動きを詳細に伝えた。だが、肝心の点が抜けていたのではないだろうか。それは「犯人がどうやって遠隔操作を行ったのか」という詳細な手法だ。

遠隔操作事件

PC遠隔操作事件に絡み、警視庁などの合同捜査本部は都内の会社員を逮捕。犯人逮捕時、メディアはこぞって詳細を伝えたが、肝心な点が抜けていたのでは!?(写真と本文は関係ありません)

 PCの遠隔操作事件について、簡単に振り返っておこう。

 インターネットの掲示板などを経由し、他人のPCにウイルスを埋め込み、これを自由に操って脅迫メールや殺人予告などを行ったとして、昨年までに4人が偽計業務妨害などで警察に逮捕され、地検も起訴した。

 しかしその後、一連の遠隔操作は自分が手がけたものとして、真犯人を名乗る人物が東京の弁護士やマスコミにメールで犯行声明を送りつけたことで、事件は真逆の方向に走り出した。私自身このメールを読んだが、犯人しか知り得ない事実、いわゆる「秘密の暴露」が多数含まれていた。心証は限りなくクロに近いものだったことを鮮明に記憶している。

 警視庁のほか、神奈川県警、大阪府警、三重県警が調べ直した結果、誤認逮捕が判明。地検が異例の起訴取り消し処分を発表するなど、サイバー犯罪を巡るずさんな捜査態勢があらわになった。

 今年1月になると、事件は新たな局面に入る。真犯人を名乗る人物が再度報道機関にメールを送付。この中では、神奈川県江ノ島の猫に“証拠”となる記憶媒体を取り付けた首輪を着けたことを明かした。

 警視庁と他の県警からなる合同捜査本部が調べたところ、メールの通りに実際に首輪からSDカードが発見された。

 再度の犯行メールから約1カ月後、東京江東区に住む30歳の男性が割り出され、威力業務妨害容疑で逮捕された。この男性は、かつてインターネット関連の犯罪で逮捕歴があった。一連の犯行の動機として、自分の人生を大きく変えてしまった警察、検察当局への恨みがあったとされる。主要メディアの報道によれば、逮捕された男性は容疑事実を否認しているという。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.