社長の私が、20代の社員に「アホ!」と言われた――なぜ?仕事をしたら“生保”ができた(後編)(1/5 ページ)

» 2013年02月13日 08時02分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

仕事をしたら“生保”ができた:

 「御社を取材したいと思っているのですが、その前に打ち合わせをお願いしてもいいでしょうか?」――。

 ネット専業の保険会社「ライフネット生命保険」の広報Sさんとそんなやりとりをしていた。というのも記者は生保業界に精通していないので、「Sさんのお知恵を拝借して、なんとか記事にできないかな〜」と考えていたのだ。

 そして当日。ライフネットの本社におうかがいしたところ、Sさんからこんなことを言われた。「ドイさん、いきなりで申し訳ないのですが、社長の出口がお会いしたいと言ってまして……」と。

 え……、きょ、今日は打ち合わせでしたよね? と慌てていると、出口治明社長が登場したのだ。こんな機会はめったにないので、記者としてはラッキーなはず。しかし明らかに準備不足なのだ。インタビューを行う前には、会社の業績はどうか、社長はどんな経歴なのか、業界はどんな問題を抱えているのか――といったことを調べなければいけない。そんな基本の「き」もできていないまま、インタビューがスタートしたのである。


お前、ナニ考えてんねん。アホか

土肥:前編では、会社設立時にはどんなことを考えてきたのか、そして実際にビジネスをスタートされてどんなことを感じたのか、そんな話を中心にうかがいました。

 後編では御社のメインターゲットである若者のハートをどのようにしてつかんできたのか。話を聞かせてください。

出口:「ハトが選んだ生命保険に入る」という広告を見られたことはありますか? これは河原にいるハトが食べた豆で保険金額を決める、という企画です。

 この企画のことを聞かされていなかった私のところに、20代の社員がやって来てこう言いました。「明日、二子玉川に行ってくださいね」と。意味がよく分からなかったので、なんでや? と聞いたところ「紙の皿に『1000万円』『2000万円』『3000万円』と書いて、それを河原に置きます。そこに豆を入れて、例えばハトが『2000万円』と書かれた皿の豆を食べたら、その保険に入ってもらう。そんな企画です」と説明してくれました。

 この話を聞いて、私は怒りました。「こんなふざけた企画を金融機関である保険会社がやって、お客さまが喜ぶのか? ふざけたことをやる会社の保険なんて解約しよう、と思うに違いない。お前、ナニ考えてんねん。アホか」と。

土肥:「アホ」と言いましたか。

二子玉川の河原に「1000万円」「2000万円」「3000万円」と書いた紙の皿を置く(出典:デイリーポータル Z)
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