本当の“顧客ロイヤルティ”とは何を意味するのか(1/2 ページ)

» 2013年02月05日 08時00分 公開
[石塚しのぶ,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:石塚しのぶ

ダイナ・サーチ、インク 代表。南カリフォルニア大学修士課程卒業。米国企業で職歴を積んだ後、1982年にダイナ・サーチ、インクを設立。以来、ロサンゼルスを拠点に、日米間ビジネスのコンサルティング業に従事している。著書に「未来企業は共に夢を見る〜コア・バリュー経営〜」(2013年3月発売予定)、 「ザッポスの奇跡 改訂版」、「顧客の時代がやってきた!売れる仕組みに革命が起きる」などがある。


 顧客ロイヤルティ、従業員ロイヤルティ……ビジネスをしている人なら誰でも一度は耳にしたことのある言葉だと思います。

 ロイヤルティを英語の辞書でひくと、次のような定義が出てきます(以下は私が日本語に訳したものです)。

ロイヤルティ:特定の人、国、団体、あるいは目的に対して忠実であること。熱愛すること。

 この定義をもとに考えると、ロイヤルティとは心や感情の問題であることが分かります。しかし、これがビジネスの世界に持ち込まれてしまうと、いつの間にかお金の問題になってしまうのです。

 例えば、ロイヤルティ・プログラムと呼ばれるものがあります。日本では「ポイント・プログラム」でしょうか。メンバーズ・カードなど、顧客の購入を記録し、追跡する仕組みがあって、購入する額や頻度に従って「ポイント」が貯まっていきます。そして、その「ポイント」をプレゼントや値引・割引などある種の特典と引き換え可能にすることによって、顧客のロイヤルティに報いるというコンセプトです。

 ビジネスの世界では成果が数値化でき、測定できなければいけませんから、ロイヤルティを測る指標として購買額や頻度などが用いられるのはうなずけます。しかし、ビジネスを運営する側(つまり企業)のマインドセットとして、「購入=ロイヤルティ」と信じこんでしまうと、顧客を誤解し、顧客との間に行き違いを作ることになるのではないかと思うのです。

 ザッポスのような会社を研究していくうちに、私は「ロイヤルティ」という言葉について、まったく異なるイメージを抱くようになりました。人が「ロイヤルである」ということは、私は、「特定の人や、国や団体、あるいは目的に対して熱烈な愛情を抱くが上に、その人(国、企業、目的)のためなら一肌脱いでしまう」ということだと思うのです。

 米国に、ホール・フーズ・マーケットという会社があり、オーガニック/自然食品にフォーカスをおいたスーパーとしては世界最大のものですが、その商品構成や店舗作りの先進性ばかりではなく、利益最大化ではなく、社会価値の最大化を最優先とする経営の実践で大変尊敬されている会社です。同社の創設者であり、現在も最高経営責任者を務めているジョン・マッキーの新著を読んでいますが、その中で、ロイヤルティの真に意味するところを具現化した逸話があり、はっとさせられました。

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