事実上の“足あと”復活――mixiの考える「ユーザーファースト」とは何かなぜこのタイミングで?(5/5 ページ)

» 2013年02月01日 20時00分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]
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リアルタイム訪問者と旧足あとの違い

 このような状況を踏まえて、ミクシィは、訪問者機能のリアルタイム化に踏み切った。新しく導入されたリアルタイム訪問者機能では、訪問履歴を名前+タイムスタンプの形でリアルタイムに最大60件まで表示するなど、以前の足あと機能とほぼ同等になっているが、従来の足あととは違う点もいくつかある。

1月22日から提供されている、リアルタイム訪問者機能

 1つめの違いは、「総アクセス数」が表示されないことだ(足あとがあったころは「ペタ」と呼ばれていた)。2つめ、リアルタイム訪問者ではやってきた人すべてが表示されるわけではないという点も異なる。訪問者として表示されるのは、友人、友人の友人、自分が参加しているコミュニティ経由で訪問したユーザー、自分が参加しているmixiページ経由で訪問したユーザー、同僚ネットワーク経由で訪問したユーザー、mixi同級生経由で訪問したユーザーに限られる。スパム対策や出会い系サイト規制法(参照リンク)に配慮して、ユーザーとの関係性がはっきりしない人は表示されない仕組みだが、例えば、全体に公開しているニュース日記を見て訪れた人なども表示されないことになる。

 3つ目として、足あとが付くかどうかがサービスベースからアクションベースに変更されたことが挙げられる。これまでは日記やプロフィールページなどには足あとが付く半面、つぶやき(ボイス)を見たりコメントを書いたりしても足あとは付かなかった。しかし現在は、イイネを付けたり、詳細を見たりといった何らかのアクションをすれば、日記やプロフィールページだけでなく、つぶやきや写真にも訪問者として記録されるようになっている。

旧足あと、訪問者、リアルタイム訪問者の機能の違い

 なお、1月22日の時点ではあくまで「訪問者機能のリアルタイム化」であり、足あとという名称は使っていない。3月末まではテストリリースという形なので、総アクセス数や、名称をどうするかといった点も含めて、3月末以降に変更される可能性もあるという。


遅すぎたとは思うが、やらないよりはやったほうがいい

 以上、ユーザーファーストのコンセプトの下でmixiがいったん廃止した足あとを復活させた経緯を詳しく見てきた。足あとが廃止されたのが2011年6月。反対するコミュニティで署名活動が行われるなどmixiユーザーがもっともこれに反発していたのが同年の夏頃の話だ。2011年下期、mixiに関する最も熱いテーマは、新機能ではなく足あとの是非だったといえる。

 2012年5月、開発の責任者だった副社長の原田明典氏が取締役へ降格。その後組織を大きく変えてユニット制が動き始めたのが同年8月、そして機能要望などユーザーの声をフィードバックする形で11月頃から各種機能のリニューアルが行われ始めた。訪問者のリアルタイム化が行われたのは2013年1月下旬だから、足あと廃止から1年半以上経っている。筆者の率直な感想を言えば、「正直、遅すぎた。でもやらないよりはやったほうがいいし、ユーザーファースト&ユニット制は少しずついい方向に向かっていると思う」というところだろうか。

 今回の訪問者のリアルタイム化が翌2012年の春ごろ、せめて夏頃に行われていれば、もっと反響も大きかっただろうし、ユーザーが離れていくのも食い止められたのではないか。しかしこのあたりの感覚が、ユーザーとmixiの運営スタッフでややずれている印象を受ける。2012年11月に行われたユーザーファーストウィークでは、足あとについては独立して最終日を1日当ててあったにもかかわらず、実は3日間でもっとも出席者が少なかったのがこの日だった。mixiを離れたユーザーにとっても、mixiを使い続けているユーザーにとっても、すでに足あと機能の是非はホットな話題ではない。改修が遅すぎた感は否めないし、せめて「足あと」の名称を復活させない限り、さほど話題にもならないのではないかと思われる。

 とはいえ、いい兆候と思う部分もある。2011年ごろまではトップダウンで機能開発が行われていたのに対し、ユニット制では20代半ばの若い開発スタッフが中心となって、ボトムアップの形で機能改善が行われている。ユーザーファーストウィークの時に、ボイスや日記、UI、フォトなどさまざまなユニットの開発スタッフと話す機会があったのだが、ほとんどの人たちはmixiのサービスが好きで、よく使っていること、便利・不便と思うポイントも、一般ユーザーの目線とそうズレていないと感じた。ユーザー目線を失わず、今のままで機能改善が続けられれば、悪い方向には進まないだろうと筆者は考えている。

 ただし、ユニット制の若いスタッフがいくら頑張ったところで、一度mixiから離れてしまったユーザーをふたたび呼び戻すのは至難の業だろう。mixiをすでに使っていない人たちへのメッセージを発すること、また使ってみたいと思わせること。mixiを使ったことがない人たちに対し、「使ってみたい」と思わせるような新しい魅力を作り、アピールしていくこと……それは笠原社長を始め、ミクシィのトップがすべき仕事だ。

 1月24日、元はてな副社長の川崎裕一氏など、3名の新しい執行役員がミクシィに参加した(参考記事)。新しいサービスに敏感な、ネットリテラシーの高いユーザー層を取り込むには、効果的な人選であり、彼らがこれから生み出すサービスの内容次第では、再度勢いを取り戻すこともできるのではないか。

 一度離れたユーザーを再び取り戻せるか。ミクシィの正念場は、これからだ。

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