アルジェリア人質事件の裏にある民主化運動「アラブの春」伊吹太歩の世界の歩き方(3/3 ページ)

» 2013年01月31日 08時00分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]
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すでに組織として崩壊しているアルカイダ

 アルカイダという組織はもう実像が見えなくなっている。そもそもアフガニスタンやパキスタンに潜んで作戦を立案などしていたが、9.11米同時多発テロを受けてアフガニスタンに侵攻した米軍に、当時のタリバン政権は崩壊させられた。そしてアルカイダは「安全な隠れ家」を失った。

 その後、アルカイダはパキスタンなど、まともに国の統治が行き届いていないイスラム色の強い地域を選び、いわゆるアルカイダ系という組織の中に埋もれた。そしてビンラディンの「意志」を受け継いで欧米への攻撃を継続した。

 パキスタンも安全ではなくなると、次はイエメン。アルカイダの幹部らはイエメン南部で活動を活発化させたが、それを危惧した米国が無人戦闘機で爆撃を続けた。イエメンに潜伏していた米国籍のアンワル・アウラキはイエメンで無人機によって殺された。

 またアフリカでは、ソマリアの「アルシャバブ」などと手を組み、その「意志」を受け継いでいる。そんな組織の1つが、今回事件に関わっているとされた「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(AQIM)」なのだ。

 こう見ると分かるように、もはやアルカイダには組織としての形がないといえる。どちらかといえば、もう「運動」に近くなっている。欧米相手にテロを起こしてアルカイダ系だと勝手に名乗ればいい。そんな状態だ。

北アフリカの天然資源がほしい日本

 北アフリカに話を戻すと、リビアの崩壊後には日本も積極的に関わろうとした。カダフィ政権崩壊後には、天然資源確保に向けて上村司中東アフリカ局参事官を団長とする外務省のベンガジ調査ミッションが、国民評議会(暫定政府)の拠点であるベンガジを訪問した。さらに中東に精通している自民党の小池百合子もベンガジを訪問、日本との関係強化について話し合った。ちなみにリビアの石油埋蔵量は世界第8位だ。

 こうした動きは非難できないが、ただ結果として、リビア崩壊で恩恵に授かろうとした日本人もいれば、リビア崩壊の「犠牲者」になった日本人もいるということだ。何ともやりきれない思いは払拭できない。

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