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» 2013年01月30日 08時00分 UPDATE

アフリカだけじゃない、東南アジアのテロの危険性

東南アジアにもテロ組織はあり、日本企業が狙われる危険はある。テロを含め犯罪に巻き込まれないよう、現地駐在員のために安全管理ガイドラインを作るべきだ。

[日沖博道,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:日沖博道(ひおき・ひろみち)

パスファインダーズ株式会社社長。


 正直、少し迷ったのだが、アルジェリアで日揮社員らが襲われたテロ事件が気になって仕方がないため、書こうと思う。

 今、ニッポン企業の多くが注目する東南アジアは、近隣に無政府状態が存在する中東や北・中部アフリカ諸国ほど大規模テロ活動が活発なわけではないが、駐在員の安全が保証されている世界でもない。実際、外務省のホームページでも「我が国の国際テロ対策」と題して、東南アジアにおける国際テロ組織によるテロの発生事実について指摘されている。

 これは2002年10月12日にバリ島で起きた爆弾テロ事件が、国際テロ組織・アルカーイダとの関係があるとされる「ジェマア・イスラミア」の犯行とされていることを指しているのだと思われる。東南アジア全域で「イスラム国家建設」を目指して活動しているこのイスラム過激派は、各地にある分離独立運動に関与するイスラム系過激派組織と水面下で連携している可能性も指摘されている。

 具体的には、インドネシアのアチェにおける独立運動の中から生まれた「自由アチェ運動(GAM)」、フィリピン南部のミンダナオ地域の分離独立から生まれた「モロ・イスラム解放戦線(MILF)」、タイ南部地域の「パッタニー統一解放機構(PULO)」などが、武力で分離独立運動を進めようとしてきた代表的組織である。

 日本企業の経済活動とは本来無縁のはずなのだが、地元政府の経済政策に協力することになる日本企業や欧米企業の関係者が、テロ活動のターゲットにならない保証はない。首都地域では各国政府の取り締まり体制も厳しいが、地方では欧米人をターゲットにした襲撃や誘拐事件は時折起きている。例えばミンダナオ島では2011年10月、住友金属鉱山の子会社のニッケル精錬プラント建設現場や関連鉱山会社が襲撃されている(フィリピン人警備員4人が殺害された)。

 通常の民間人にとってテロから身を守る術は「危険地帯に行かないこと」くらいが関の山だろう(日揮や住友金属鉱山などはそうした地域が仕事場なので、民間警備会社に頼るしかないが)。もっとも、日本政府のテロ対策努力を挙げないのも片手落ちであろう。例えばそのミンダナオ紛争の解決に貢献すべく、日本政府は2006年から校舎、職業訓練所、給水設備などの建設や補修などのミンダナオ支援を行っており、2011年8月にはアキノ大統領とムラドMILF議長との非公式会談を日本で仲介し、和平に向けた交渉を支援している。

 そうしたイスラム系過激派テロ組織による事件以外にも、地元暴力組織や民間人による営利誘拐や強盗事件は、一部の特殊な国を除けば「日常茶飯事」といっても差し支えない。とはいえ特別に東南アジアが危ないというわけではない。どの国にも悪い奴らはいる。

 バンコックやホーチミンなど東南アジアの大都市に赴任する人たちの間では「車を運転するな」というのはかなり浸透しているようである。渋滞がすごい上に交通ルール無視が横行しているので、日本人ドライバーでは簡単にバイクや他車にぶつけてしまい、法外な修理代や慰謝料を請求されるからである。赴任前から自家用車を運転しないよう注意されるようだし、会社が地元ドライバーごと雇うケースも多い。

 しかし、それ以上に重要な身の安全のため、東南アジア駐在の日本人に言いたいのは、「日本国内と同じような行動をするのは止めてくれ」ということである。例えば、日本語を使えるとか親切にしてくれるからといって、まだよく知らない人にのこのこと付いて見知らぬ土地に出掛けるのはやめよう、地元の人ですら立ち寄らない危険地区というのはどの都市にも必ずあるので、赴任当初に地元の人にちゃんと教えてもらうこと、などといった安全管理ガイドラインを作って徹底することをまずはお薦めしたい。(日沖博道)

 →日沖博道氏のバックナンバー

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