2000年前でも同じ!? ブッダが語ったリーダーシップ論MBA僧侶が説く仏教と経営(2/2 ページ)

» 2013年01月30日 08時00分 公開
[松本紹圭,GLOBIS.JP]
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仏教的フォロワーシップ〜部下が上司に対してなすべきこと〜

1. 上司より早く出勤する

 部下の仕事は上司によって規定されますが、そもそもその場にいなければ仕事を頼むこともできません。上司がいつでも仕事が頼める状態にしておくということが、部下としての基本的な姿勢です。

2. 上司より後に仕事を終える

 「上司が残ってるからまだ帰れないよ……」とぼやく人がいますが、部下の仕事は上司の仕事を補佐することです。上司が一生懸命仕事しているのなら、そこにはきっとまだやるべき仕事があるはずです。上司がすでに仕事を終えたのにダラダラ残っているだけ、というのでもなければ、前向きに残りましょう。

3. 正直に与えられたものだけを受ける

 「30代の自分たちはこんな安い給料で死ぬほど働いて、見るからにヒマそうな50代の上司連中を食わしているなんて、もうやってらんないよ!」と怒りたくなる人の気持ちも分からないではないですが、ヤケを起こしてはいけません。安い給料を何か悪いことをして取り返そうと思っても、それは長い目で見ると、自分の心を傷つけ、誠実さというリーダーシップの必須条件を失うだけです。

4. 仕事に熟練し、責任を持つ

 常に上司より早く出勤し、上司より後に仕事を終え、正直に与えられたものだけを受け取る部下だとしても、仕事ができなければどうしようもないということです。もちろん、誰しも最初から仕事に熟練していることなどあり得ませんから、苦労して少しずつ成長していくしかないのですが、それを真摯(しんし)にやるかどうかが問題です。ゴキゲン取りにばかり長けた人というのはいるものですが、ゴキゲン取りと本気の取り組みの区別が付かないような上司は自分の付いていくべきリーダーではないと心得て、真摯に向上心を持って仕事に取り組むことが大切です。

5. 会社や上司の名誉を傷つけない

 上司の仕事を補佐するのが部下の仕事ですが、それは足りない手を貸せばいいというものではなく、あらゆる面でポジティブに支えなければなりません。手は言われた通りに動かしながらも、口では組織や上司の悪口を言っているようでは、部下として失格です。そういうクセがついてしまうと、どこへ行っても上司からの信頼を勝ち取ることはできなくなります。

 以上、仏教的リーダーシップとフォロワーシップ、いかがでしょうか。上司と部下がお互いに幸せにやっていくために必要なことは、2000年を経ても変わらないものですね。

 「リーダーシップ論」というと、毎年のように新たなキーワードやフレームワークが登場して最新版へとアップデートされているかのように思えますが、基本はいつの時代も変わらないのです。

松本紹圭(まつもと・しょうけい)

1979年北海道生まれ。浄土真宗本願寺派光明寺僧侶。蓮花寺佛教研究所研究員。米日財団リーダーシッププログラムDelegate。東京大学文学部哲学科卒業。超宗派仏教徒のWebサイト「彼岸寺」を設立し、お寺の音楽会「誰そ彼」や、お寺カフェ「神谷町オープンテラス」を運営。2010年、南インドのIndian School of BusinessでMBA取得。現在は東京光明寺に活動の拠点を置く。2012年、若手住職向けにお寺の経営を指南する「未来の住職塾」を開講。著書に『おぼうさん、はじめました。』(ダイヤモンド社)、『「こころの静寂」を手に入れる37の方法』(すばる舎)、『東大卒僧侶の「お坊さん革命」』(講談社プラスアルファ新書)、『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー21社)、『脱「臆病」入門』(すばる舎)など。


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