サービス業の本質を3つにまとめてみた(2/2 ページ)

» 2013年01月29日 08時00分 公開
[松井拓己,INSIGHT NOW!]
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基本サービスメニューの3分類を重ねてみるとサービス強化のヒントが見えてくる

 先ほどの「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の3分類で、改めてサービス要素を見直してみようと思います。ここでは、製造業での活用もイメージしやすいように「農業」を例に考えてみたいと思います。

 まず、一般的な農家は作った野菜を農協に納めて収入を得ていますよね。これは、先ほどの基本サービスメニュー3分類でいうところの、野菜という「モノ提供サービス」と考えることができます。

 続いて、都会近郊の農家では、例えば秋口に旅行会社とタイアップして芋掘りツアーを企画していたりします。これは、芋という「モノ提供サービス」に、芋堀りという「快適提供サービス(楽しさ提供)」という要素が加わったサービスだと言えます。

 そして最近流行りの、無農薬有機野菜が季節ごとに産地から直接自宅に段ボールで送られてくる季節の野菜便。これは、野菜という「モノ提供サービス」に、無農薬からくる安心・安全や有機野菜のおいしさ、楽しみに待つワクワク感といった「快適提供サービス」の要素が加わっています。そしてさらには、届いた段ボールを開けてみると、農家の方の顔写真付きの手紙や、初めて見るような野菜をおいしく食べるためのレシピなどが入っていて、「情報提供サービス」の要素も含まれていることが分かります。

 このように、季節の野菜便は「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の3つの要素をバランスよく取り入れることで、付加価値の高いサービスを提供していると言えます。あるデータでは、大根1本当たりの農家の収入が、野菜を農協に納める場合と季節の野菜便とで約10倍異なるとも言われています。

 今回の例は農業でしたが、ほかにもこの3つの要素をバランスよく取り入れているサービスは、例えば製造業ではスマートフォンや自動車など、元気の良い業界が多いことが分かります。

 このように、基本サービスメニューの3分類「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の視点で自社サービスを見直してみて、取り組んでいない部分やバランスの悪い部分が見つかれば、そこにサービス強化のヒントが見つかるのではないでしょうか?

 例えば以前の記事「製造業もサービスを売れ! 4つの方向性を考える」で触れた内容では、例えばタニタ食堂やルクエカフェ、KID-O-KIDなど、店舗に製品を並べるだけでなく、製品を実際に使って楽しめるサービスを提供することで製品の魅力を伝える工夫をしているケースがあります。これは、「モノ提供サービス」に「快適提供サービス(楽しさ提供)」を加えたサービス強化と見ることができます。

 また最近進んでいるレンタル事業化は、製品という「モノ提供サービス」よりも「快適提供サービス」の方に価値の源泉をシフトするサービス強化ととらえることができます。もちろんこの時、レンタルサービスを活用したライフスタイル情報の発信など「情報提供サービス」が極めて重要になります。

 このように、今注目されている製造業のサービス強化においても、基本サービスメニュー3分類のバランスを考えると、新しいサービス強化のヒントが得られるかもしれません。

サービス強化のヒントが見つかったら

 今回はまずは簡単にサービス強化のヒントを見つけるための視点として、基本サービスメニューの3分類をご紹介しました。ここで何となくでもヒントが見つかったら、今度は本格的に腰をすえてサービス強化の検討を進めなければなりませんね。その際にやるべきことは、まずはやっぱりお客さんの事前期待を把握することです。

 これまでの記事で触れてきた通り、「サービスはお客さんと一緒になって作るもの」「お客さんの事前期待に適合したものをサービスという(事前期待に適合していないものは、余計なお世話などと言われてしまう)」というポイントが極めて重要です。勝手にサービスを作ってお客さんにぶつけても、まったく評価されないということはよくあります。ぜひ、サービス強化を進める場合も、やはり「事前期待をつかまないとサービスは提供できない」という視点で取り組んでいただければ幸いです。(松井拓己)

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