なぜ「必要悪」の踏切が存在するのか――ここにも本音と建前が杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)

» 2013年01月25日 08時12分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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「踏切」の存在を肯定し、「安全な踏切」を作れ

 「子どもは飛び出す」「老人は踏切を渡り切れない」「携帯電話に夢中な人は周囲に注意を払わない」。どんなに注意を喚起しても、こういう人は減らない。北海道や東北で列車に跳ね飛ばされるシカと同じくらい、人の言うことを聞かない。自動車を運転する人なら理解していただけるだろう。赤信号を無視する歩行者や自転車に、何度もヒヤッとさせられたはずだ。

 日本は新幹線を全区間立体交差とし、人身事故がほぼゼロという実績を作り、安全な高速鉄道を誇っている。しかし、行政も立法も、そろそろ発想を転換しないといけない。踏切で無意識に死線に踏み入れる人々の存在を肯定し、「踏切はある」そして「ゼロにはできない」という立場になって、第4種踏切の第3種または第1種へ向けた改良にも援助し、警報装置や保安装置の開発を支援すべきだ。

 小学生の死亡事故が2度も起きたあの踏切は、行田市が廃止しようとしたところ、踏切の利用者から「通行したい」という要望が多く廃止できなかったいう。ニュース映像を見る限り、付近には住宅も多く、警報機は騒音問題になりかねない。しかし、日本のオーディオ技術、光学技術を持ってすれば、指向性の高いスピーカーやLEDランプを使い、踏切に接近する人だけに危険を知らせる装置だって作れそうなものじゃないか。

 なぜそれを開発し、販売するメーカーが現れないのか。現行法では細道の第4種踏切の改良に対して、国の補助支援や技術機関の指導協力を得にくいからだろうか。ローカル鉄道や地方自治体に売り込もうにも、補助金なしでは買ってくれないからかもしれない。

 踏切はあるものとして法律を作り、運用すべきである。第4種踏切も例外ではない。

 世界に誇れる安全な踏切。日本ならきっとできる。私はそう信じている。

岳南鉄道に残る電鈴式警報機。かつてはどこでも見られたが、カンカンと大きな音をたてるため電子音式に置き換えられていった
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