企業風土と企業文化の違いを知る

» 2013年01月23日 08時00分 公開
[今野誠一,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

今野誠一(いまの・せいいち)

マングローブ社長。設立以来15年、企業経営にあたりつつ、自らも第一線のコンサルタントとして、主に組織変革コンサルティング、経営幹部教育プログラムや管理職研修のファシリテーション、企業理念構築や経営ビジョン構築ワークショップのファイシリテーションなどを担当している。企業からはもちろん、昨今は自治体などからの要請による組織変革に関する講演も多い。著書に『マングローブが教えてくれた働き方』『稼ぐチームになるためのすぐやるリーダーの仕事術』がある。


 仕事のサイクルを上手に回していくことを考えるだけではなく、企業風土や企業文化といった目に見えないもの、仕事や人を取り巻く環境や空気のようなものをもマネジメントしていく時代だと言われて久しい。文字通り目に見えないだけに、なかなか決定打が見出せず四苦八苦している経営者が多いのが実情である。

 そもそも、企業風土と企業文化という言葉の定義すらあいまいである。企業風土も企業文化も、会社内の雰囲気といった意味合いで混同して使われているように思う。以下、自分なりの定義を試みてみたい。

「企業風土」とは?

 職場の人間関係のあり方、職場の温度といった、社員ひとりひとりから見た労働環境のこと。職場の人間関係とは、いわゆる風通しといった上下の意思疎通のとりやすさや、ほめる叱るなどのコミュニケーションの傾向のことであり、職場の温度とは、挑戦的な目標に自律的に挑んでいるか否かといったような仕事に取り組む姿勢の共通点のことである。

「企業文化」とは?

 企業が継続的に業績をあげていくための、経営戦略の実行の仕方や、目的達成のためのプロセス上の各種のルールやしきたりのこと。中長期の計画があるのかないのか。PDCAの回し方がしっかりしているのかそうではないのか。目標の立て方がトップダウンであるのか、ボトムアップであるのか。目標の達成状況や業務の進捗確認のための会議の仕方はどうか? など。

まずは企業文化を

 このように分けて考えると、企業風土は社員のやる気やエネルギーに影響を与えることができるが、業績を上げる方法に直接影響を与えるものではない。

 一方、企業文化は仕事の仕方に直接影響を与えるものであり、どんなに風土が良くても、業績の上げ方とも言える文化を作りあげなければ業績を上げることにはつながらないのである。

 風通しがよく、家族的で和気あいあいとしていて、社員のやる気が高いのに業績が伴わないという企業があるとすれば、それは企業風土作りには成功しているが、企業文化作りには意識が低いということになる。

 言い方を変えれば、企業風土作りは社員のやる気やエネルギーを上げる方法を考え実行する活動であり、企業文化作りは、順調に成果を上げるための方法を考え実行する活動である。

 企業が趣味を同じくする人が集まる同好会などではなく、あくまでも社会に価値を提供して利潤を上げるために人が集まっているところと考えると、まずは意志を持って「企業文化」を作り上げ、その後それを強化する意味合いで企業風土作りに取り組むことが順番として正しいということを知らなければならないのだ。(今野誠一)

 →今野誠一氏のバックナンバー

Copyright (c) INSIGHT NOW! All Rights Reserved.