「子どもの就活に口を出すモンスターペアレント」は本当にいるのかサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/3 ページ)

» 2013年01月21日 09時55分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]

情報を流通させて、得をするのは誰だろう

 自戒の念を込めて書きますが、こういう話を流通させる裏には、何らかの意図が込められています。例えば、エキセントリックな話題、キャッチーな見出しを付ければ、ネットメディアならページビューがアップしますから、媒体としての価値は上がります。たとえ「そんなことはほとんどあり得ない」という話であっても、一例でもあるという事実の話なら載せる意味はあるのです。イマドキのネットメディアなら、面白い記事はソーシャルツールなどで大量に拡散されますから「これって本当なのかな、だとしたらあり得ないよね」というくらいインパクトがある内容の記事のほうが話題になりやすいのは分かりますよね。

 「親が就活に過剰介入している」という記事も、何らか意図が隠されていることが少なくありません。それらの記事の中には「親子で考える就活」とか「就職氷河期を勝ち抜くために親としてするべきこと」といったタイトルのセミナーの告知がセットになっているケースがあります。そう、極端な親御さんのケースを紹介して、そういう親になってはいけないと示唆すると同時に、そうならないためのセミナーなり講演会も用意していますので、ぜひ参加してくださいという感じで伝える。分かりやすいといえば分かりやすすぎる展開ですが、効果は満点です。

 ただ、この手法は就活の話が専売特許であるということではなくて、それ以外でもよく使われるテクニックです。ある記事が掲載されている、その周囲を見ると、それに関連したセミナーや製品などの紹介がさりげなくなされている、という例は枚挙にいとまがありません。

(写真と本文は関係ありません)

 モンスターペアレントのような親御さんが就活に出現し始めているのかもしれない、ゆとり世代の就活生はあり得ない行動を取るかもしれない、そして、採用担当者たちは内定辞退者に極めて横暴な態度を取るかもしれない……のですが、それは当然すべてではない。ある一面を切り取って、情報を流通させることでメリットを得る人たちがいるという構図を考えると、それらの話の多くは眉に唾をつけて見るべきでしょうし、それほど問題視することでもないと考えるべきでしょう。ただ、ゼロではないので「あぁ、そういう時代なのか」と“兆し”として理解する必要はあるかもしれません。多くのエキセントリックなネタは、過去の使い回しであり、別に珍しい話でもなんでもないことを忘れないようにしたいものです(うろ覚えなので余談として書いておきますが、昭和30年代の日本映画で、親御さんが息子の就職活動に関わっているという描写をみたことがあります。そう、それくらい古い話なのです)。

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