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» 2013年01月21日 08時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:日本企業が復活するために必要なもの (1/2)

今あるものを改善していくのは得意な日本のメーカー。しかし、イノベーティブな製品を作っていくためには、どうすればいいのだろうか。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”


 英紙フィナンシャルタイムズでジリアン・テット氏がソニーについて書いている。「Why no one's listening to a Walkman」、あの世界で一世を風靡したソニーが、なぜかくも凋落したのか、というコラムだ。かいつまんで言えば、要するにソニーは自分たちの成功の罠にはまった。大きくなればなるほど、そしてさまざまな分野に進出すればするほど、「サイロ・メンタリティ」になった(日本流に言えば、各部署がたこつぼ化した)。そして世の中を変えていくというイノベーティブな雰囲気を失っていったのだという。

 今、アップルやフェースブック、アマゾンといったIT企業では、「ソニーの轍を踏むな」が合い言葉なのだそうだ。確かに、アップルなどを見ていると、世界最大の会社になったというのに、作っている製品はごく限られたものだ。PC、iPod、iPhone、iPadである。そしてこれだけ大きくなっても世界で最もイノベーティブな会社である。

 ただアップルの場合、あれだけのクリエイティビティを発揮できたのは、故スティーブ・ジョブズ氏の能力に負うところが大きい。製品開発で妥協を許さない、何が何でも自分が欲しい製品を作るという執念は、他の人間にはないものだ(アマゾンのジェフ・ベゾス氏も似ているかもしれない。何度もアマゾンはつぶれると言われたが、消費者にとって便利なものは生き残るという信念を曲げなかった)。

 問題は、日本企業からアップルやアマゾンがなぜ生まれないのかということだと思う。米国で開かれた国際家電見本市CES、日本企業の目玉は4Kテレビだった。さらなる高精細を追求したテレビということである。去年は3Dが話題だったが、今年は4Kのオンパレードだ。画面がより美しくなるに越したことはないのかもしれないが、実はここに日本企業の「発想の限界」が見えているような気がする。

 もちろん、より「高精細に」というのはテレビ技術者にとって常に目指すべき目標の一つと想像する。しかし皮肉なことに、高精細になればなるほど消費者の満足度は技術開発の難しさに比例しなくなる。アナログからデジタルに変わったときは、画面の美しさに感動したものだ。レンタルビデオ店から初めてDVDを借りてみたとき、「もうビデオテープは見たくない」と思わなかったろうか。しかし4Kになったからといって、それほどの大きな質の「跳躍」は感じられない。経済学で言うところの「収穫逓減の法則」そのものであると言ってもいい。

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