コラム
» 2013年01月18日 08時00分 UPDATE

仕事とは“望むべきことを彫刻していく営み” (1/2)

働く目的が「欲する物の獲得」に向かうのか、「望むべきことの発見・創造」に向かうのか──私たちの心の中は、この2つの複雑微妙な混合である。

[村山昇,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:村山昇(むらやま・のぼる)

キャリア・ポートレート コンサルティング代表。企業・団体の従業員・職員を対象に「プロフェッショナルシップ研修」(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)を行う。「キャリアの自画像(ポートレート)」を描くマネジメントツールや「レゴブロック」を用いたゲーム研修、就労観の傾向性診断「キャリアMQ」をコア商品とする。プロ論・キャリア論を教えるのではなく、「働くこと・仕事の本質」を理解させ、腹底にジーンと効くプログラムを志向している。


 「私たちは仕事によって、望むものを手に入れるのではなく、仕事をしていくなかで、何を望むべきかを学んでいく」──ジョシュア・ハルバースタム著『仕事と幸福そして人生について』

 私が研修の中でよくやるディスカッションテーマの1つが──「お金を得ることは、働くこと(仕事)の目的か?」である。

 ありふれたテーマのようだが、実際、このことについてしっかりと討論をする機会は日常ほとんどないように思う。だから、研修でじっくり時間をとってグループでやってみると、実に熱くなるし、さまざまな考え方が出るので面白い。各グループに結論を発表させるのだが、大方、グループで統一の見解は形成されず、「こんな意見も出ましたが、一方でこんな意見もあり、なかなかまとまらず……」のような発表になる。

 いや、それでいいのだ。このテーマについて、もしすんなり統一見解が出せるようなら、この人間社会はそれだけ薄っぺらなものだという証拠になってしまう。金に対する意識や欲の度合いが人により千差万別だからこそ、この人間社会は複雑で奥が深いとも言える。

 だから、この問いに唯一無二の正解はない。講師である私ができることは、古今東西、人は労働とお金(金銭的報酬)、あるいは金欲についてどう考えてきたかを、偉人や賢人たちの言葉を紹介しながら、個々の受講者が自分に最も腹落ちする答えを見つけてもらうことだ。各自が「今日からもっと働こう」「もっと稼ごう」と思える解釈を引き出せたなら、このディスカッションは成功だ。

 私が引用する偉人・賢人たちの言葉はさまざまあるが、その1つが冒頭に掲げたハルバースタムのものである。米・コロンビア大学で哲学の教鞭を執る人物だけあって、実に味わい深い表現だと思う。

 ここには2つの仕事観が描かれている。1番目は「望むものを手に入れる」ことが目的化した働き方だ。この目的は、必然的にお金を多く得たいという欲望と直接結びついている。「働くこと」はその手段として置かれる。

 2番目の仕事観は、「何を望むかを学んでいく」ことが目的となっている。この時、学んでいくプロセスはまさに「働くこと」そのものに内在しているので、「働くこと」は手段ともなり、目的ともなる。そのプロセスに没頭して面白がる、気が付くとお金がもらえていた。それがこの仕事観の特徴だ。

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