広島電鉄でクーデターが起きた、なぜ杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)

» 2013年01月18日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]
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広電サービス向上計画に期待

 広島電鉄は昨年の11月に電車開業100週年を迎えた。これをきっかけとして「広島電鉄サービス向上計画」を発表している。その内容はグループ事業の電車、バス、不動産すべてにわたる。特に電車については「広島駅前通り線新設、平和大通り改良に伴う路線整備」「超低床車両の導入と対応路線の拡大」「ICカード乗車券による全扉乗降の導入」「駅・電停のバリアフリー化」「駅のLED案内表示など情報システムの整備」が挙げられている。

 解任された当日の越智前社長が見守っていた新型車両は、まさにここにある「超低床車両の導入」の第一弾である。従来の超低床連接車両より短いため、いままでは連接車(複数の車体をつなぎ、一体のものとして運用する車両)が入線できなかった路線にも導入可能となっている。

 「広島電鉄サービス向上計画」は広報資料も整っており、さすがに前社長の独断ではないだろう。前社長が語っていた「15年で40両の新車置き換え」の文言はなく、「今後10年間程度で10編成」と記載されている。どうもこの頃から前社長と現場の意見の相違があったようだ。

 広島ではほかにも、山陽本線と新交通アストラムラインの交差部分に乗換駅「白島新駅(仮称)」を設置する計画がある。広島電鉄も9号系統白島線の終点に白島駅があり、少し離れているけれど乗り換えは可能だ。白島線は2007年に商工会議所より交通渋滞を理由に廃止の提案がなされた。しかし広島市の意向で存続されている。現在、白島線の9号系統は広島駅に乗り入れず、白島線内の独立運行だ。ここに新型低床車を導入し、広島駅前路線からの乗り入れを可能にすれば、白島駅を第二の交通の要衝として活用できる。

 また広島には、5号系統が走る皆実線に的場町を直進し、駅前大通り新線に乗り入れる構想がある。市民団体からは広島駅から広島球場への新路線が提案されているという。新年早々、ゴタゴタした広島電鉄だが、日本の路面電車運行では歴史と実績がある。新体制の元、日本の都市交通分野をリードする存在として、広島市と広島電鉄の今後に注目だ。

広島電鉄650形。1942年製造で、写真の653号は2006年に引退。現在は651号と652号が現役。被曝した電車の生き残りとしても知られている。平日のラッシュ時間帯のほか、終戦記念日に運行されているという
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