広島電鉄でクーデターが起きた、なぜ杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)

» 2013年01月18日 08時02分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

JR西日本と対立する新路線計画

 広島電鉄の新線計画は、市内線からJR広島駅へ乗り入れる路線だ。広島電鉄はすでにJR広島駅前に乗り入れている。しかし、そこまでのルートは道幅が狭く、交差点をほぼ直角で通過することから、低速運行を強いられ、連接車体の通過に支障があるという。クルマが渋滞するだけではなく、路面電車の高速運転も不可能な状態になっている。

 そこで、広島市と広島電鉄では本線の稲荷町から駅前大通を経由して広島駅に到達する新線を建設する計画だ。これは先々代社長の大田哲哉氏のもとで免許を申請している。この大田元社長が常務取締役として招いた人物が越智氏であった。越智氏は2010年に社長に昇格すると、駅前大通線の地下建設案を提案し、これが広島電鉄側の意見として認識されるようになった。

 一方、JR西日本は高架案を支持している。JR西日本の広島支社社長は2012年12月の会見で、高架化した場合は広島駅ビルを建て替えて、広島電鉄と新幹線の乗り換えを改善する意向を示している。

 地下ルート案の場合、駅前大橋と交差する猿猴川(えんこうがわ)の下を通る必要があり、広島駅はかなり地下深くなると予想される。高架案の場合は駅前大通に高架橋脚が立ち景観を損なうほか、旧式の車両が勾配を登れなくなるという懸念があると報じられた。

 広島市では、地下案のほかに併用軌道(路面電車)案、高架案の3つから検討し、地下案と高架案の2つに絞り込んだ。どちらを採用するかは2013年3月に決定する方針だ。広島電鉄の新経営陣が地下案を撤回したことで、高架整備計画に流れができたと言えそうだ。広島と広島電鉄は駅前大通の新線運行開始を2016年度に予定しているという。

広島電鉄の新線計画。青い線が既存路線。赤い線が計画路線(出典:Google Maps)

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