「4Kテレビ」は日本を救うのか? 米CES報道にみる“いつか来た道”相場英雄の時事日想(2/3 ページ)

» 2013年01月17日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

 一昨年、私は他媒体にこんな記事を寄せた(「4K2K」でテレビは新時代に、でも誰が見るのか?)。この時点では、日系メーカーのテレビの苦境は現在ほどではなく、3Dに続く日本の独自技術というウリで4Kが取り上げられた。

 この時期、自宅のメーン機の買い替えを迫られていた私は、東芝の4K機をなんどとなく量販店の店頭でチェックした。今まで経験したことのない繊細な再生画面、そして薄型。正直なところ欲しいと思った。ただ、4K規格のソフトが極端に少ないという点と、高価格がネックとなり、買い替えは従来型の液晶にした。

 現状、4K規格のソフトはまだまだ少ない。専門家からも「映画会社、あるいは放送局にしても、割高なコンテンツ作りに二の足を踏んでいる状態」(米系証券アナリスト)との声が上がる。

 今のところ、私は4Kに買い換えるつもりはない。コスト的な制約のほか、ソフトの数を勘案すると、従来型のフルハイビジョン液晶で充分、という気持ちが強いからだ。

 CESの報道をチェックしていると、ソニーなど一部のメーカーがソフトの拡充に動いているが、肝心の高精細画面を本当の意味で楽しめるコンテンツは決定的に不足している。かつての3Dにしても、ソフトの数こそ増えたものの、爆発的にこれが普及しているという印象は薄い。

 4Kは、日本独特の“盛り過ぎ”という印象を強く抱く消費者は私だけだろうか。専門媒体は別として、一般の新聞、テレビはCESを取り上げる中で、『4Kは日系メーカーの苦境を救う新たな目玉』的な位置付けをしていたのだ。

 従来型の液晶テレビは、価格下落とともに日本企業の経営を圧迫した。4Kは高付加価値で収益性も高い、と一般媒体は伝えていたが、早晩こうした楽観論は姿を消すとみる。

4Kテレビ(左)とフルHDテレビ(右)の解像度比較(2013年1月に開催されたCESのソニーブースにて)

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