米国・中国・インドに見る、知的財産問題の最新動向(4/4 ページ)

» 2013年01月10日 08時00分 公開
[吉村哲樹,Business Media 誠]
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グローバルビジネスにおいて知財リスクが持つ重み

 本セミナーの最後には、参加者からの質問に講師が個別に答える質疑応答の時間が設けられた。

 製薬会社に勤める参加者の1人からは、ヴィニット氏に対して「製薬業界にとって、今回のインドにおける強制実施権の設定はとてもインパクトが大きい。ほかの新興国でも今回のインドのケースに倣って強制実施権の設定に踏み込む可能性があるとのことだが、具体的な話は出てきているのか?」という質問が飛んだ。それに対してヴィニット氏は「中国、ブラジル、タイでは過去に強制実施権設定の事例があるが、今回のインドのケースを受けて具体的に動いている国があるという話は、今のところは耳にしていない」と答えた。

 別の参加者からは紋谷氏に対して「技術特許に関する紛争は和解で解決することが多いが、アップルとサムスンの特許紛争はなぜこれほどまでにこじれてしまったのか」という質問が寄せられた。これに対して、紋谷氏は「実際、今年に入ってからずっと和解交渉が行われており、和解が成立するのではないかという話も一部ではあった。しかし、スマートフォンやタブレット端末のマーケットは極めて大きいので、両社ともそう簡単には負けられない。そういった事情から、現時点では紛争が拡散している」と分析した。

 秦氏に対しては「中国でビジネスを展開するに当たって、技術ノウハウの流出を防ぐための具体的な方策は?」という質問が参加者の1人から飛んだ。秦氏は「特許や実用新案、意匠の出願を行うのがベストだが、もし何らかの理由で出願できない場合には、あらかじめ知財に関する契約をきちんと締結し、不正流出があった際には相手方に違約責任を負わせるべき。また、あらかじめ重要情報の管理体制についても義務を負わせて、定期的に監査を行うといった対応でリスクを低減できる」と述べ、多面的な対策を講じることが重要だとの認識を示した。

パネルディスカッションでは会場に詰め掛けた参加者からさまざまな質問が飛んだ
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