会社を変化させるためにはどうすればいいのか?(1/2 ページ)

» 2013年01月08日 08時00分 公開
[荒川大,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:荒川大(あらかわ・ひろし)

株式会社ENNA代表取締役。「人的リスクマネジメント」をキーワードとして、内部統制対応の人事コンサルティング、IT統制対応の人材派遣、メンタルヘルスのカウンセリングを提供している。


 組織変革を何をもって行うかということを考えると、一般的には、組織図を変えてみて、部署を増やしたり減らしたりしてみて、幹部教育を強化して、幹部候補にリーダーシップ研修を実施する……といったケースが多いと思われます。

 この取り組みそのものに何か意見があるわけではなく、継続性を考えた時に“個人の変化”に依存した組織変革をどれだけ続けられるかが課題になると考えるわけです。

 しかし、実際の業務にまで視野を広げてみると、組織変革を実施してもそれから数年間は、既存の業務マニュアルを使用し、業務管理システムも微調整を行うだけで仕事の流れは大きく変わることがないというケースが少なくありません。

 社内の混乱を避けるという理由で、業務プロセスまでは変えないと決定され、組織変革が立ち行かないことも多くありますので、それはそれで仕方ないのかもしれません。

 もし、組織変革をプロジェクトとして立ち上げ、継続的に実践していく中で、業務改善やマニュアルの改訂までを行っているとしたら、それは“変化させる”取り組みが十分にできているものと思います。

 そこまでを実践している組織変革でなければ、経営陣が求める変化を生むことは難しいかもしれませんが、人によっては大きな賭けのように理解されることもあるでしょう。

変化させることを強いる変革

 これまで上場企業の社内規程類・社内文書類の整備や業務改善を支援している中で、組織変革を決意しなくても済むように日々マネジメントすることが、本来の“組織変革”ではないかと考えています。

 社員個々人が均一に会社の大号令で変化していくというのは、組織運営上、とても効率的であるとは思うのですが、大手企業であれば国内外の外部環境の変化の速さに対して、中小企業であれば競合企業との過剰な競争の中で“大号令待ち”という状況はかなりリスクの高い組織運営と言わざるを得ないかもしれません。

 また、日本企業の独特な文化というか、今ほどコンプライアンスが叫ばれ、内部統制が徹底され、監査法人のチェックも十分に行われているにも関わらず、社内規程が業務を管理するために十分に策定されていないことが多く、ルールなしで雰囲気で事業が運営されているのが現状です。

 ルールがないというのは、明文化されていないというだけではなく、何かをやらなければならないという事業計画や仕事の雰囲気は醸成されているものの「変えなければならない」とか「止めなければならない」といった、外部環境とリンクして変化を求めている部分を規定した社内のルールがないために「薄々気付いている、もうからない事業をズルズル継続する」企業が意外と多いということでもあります。

 内部統制対応や文書化対応などを数年前に実施した上場企業でも、変更管理が規定されておらず、何かを止めるのに承認プロセスが決められていないといった相談は数多く、社員ひとりひとりが「この事業はうまくいかない」とか「新しい事業を始めたい」といった外部環境に沿った意思(表明)が、とても重要であるのにも関わらず、見なかったことにされることも多くあります。

 社内規程を「どうせ社員は目にしないから……」で片付けるのではなく、変化に応じて、社員が自発的に業務プロセスを見直し、マニュアルを改訂し、社内システムもそれら要求に応じて変更させる。そのための規程・社内ルールを定めることが、組織変革の重要な第一歩になると考えています。

 そして、課題・リスクに気付いた際に仕事や業務プロセスの変化を要求し実践することを求める社内のルールに従って、その変化を生み出すために社員ひとりひとりから集まる意思や要求に対して耳を傾け、情報を収集し判断して、決裁するのが、本当の変化していく組織における管理職のあるべき姿だと思うわけです。ここまでの体制ができた後に、幹部教育やリーダーシップ研修はとても有効だと思うのです。

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