組織変革時のマネジメントに求められる3つのポイント

» 2013年01月04日 00時00分 公開
[今野誠一,INSIGHT NOW!]
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今野誠一(いまの・せいいち)

マングローブ社長。組織変革と、その担い手となる管理職の人材開発を強みとする「組織人事コンサルティング会社」を経営。そのかたわら、経営者コミュニティサイト「MG-NET+(マグネットプラス)」編集長として経営者同士のネットワーク作りにも取り組んでいる。著書に『マングローブが教えてくれた働き方 ナチュラル経営のススメ』(ブルース・インターアクションズ)。


 前回は企業が組織変革を進めて行く時に、リーダーシップに求められるものとして

1.厳しい時こそ、まずはうまくいっていることと強みに目を向ける

2.経営に関する危機感は、責任と権限に応じて要望する

3.うまくいっていることと強みに集中して着実な復活のシナリオを描く

 という3つのことを書いた。

 今回はトップと一般社員の間に立つ、マネジメントに求められる3つのことを考えてみよう。

1.自分事として考える

 変革が必要な時というのは、多くの場合は業績が芳しくなく、社内の雰囲気も危機意識の中で沈滞していることが多く、市場価値に自信のある社員は早々に転職という行動に出たりしていることも多いものである。

 こんな時に求められるのは、当事者意識と責任感を持ってことに当たる管理職である。敏く状況を察知して自分を守るための行動としてその場を逃れたとしても、待っているのは厳しい環境から逃げる癖と、逃亡者としての汚名と、自分を鍛えるチャンスを逃したという事実だけである。

 会社への貢献意識と、自分の部下を守ろうという愛情と、自分の仕事への責任感と、人間的にもビジネスマンとしても、自分を鍛えるチャンスととらえる成長意欲とで、すべてを自分事として前向きに取り組む姿勢が求められる。

 非常時には、ひどい管理職も出現するものである。自分の部下に対して「こんな会社早く逃げ出したほうがいいぞ!」などとそそのかす、当事者意識と責任感のかけらもない行動を取る管理職も現実として出てくるものなのである。

2.チームのエネルギーレベルを上げる

 「こんな会社早く逃げ出したほうがいいぞ!」などと部下をそそのかすなどということは、管理職どころか人間としても最低レベルの話であって、本来求められるのは、メンバーひとりひとりを鼓舞し、絶妙な組織運営で自分の預かるチームのエネルギーレベルを上げることである。

 どんなに優れたビジネスモデルを持っていても、世の中の変化や会社の事態の変化に合わせて仕事をやり方を考えながら業績を上げていくのは「人間」である。そしてその源は、その人が持っている「エネルギー」である。

 組織の変革には、平時よりもよけいに社員にも負荷がかかり、普段よりも多くのエネルギーが必要である。メンバー一人ひとりが持っている「貢献のエネルギー」「成長のエネルギー」「実現のエネルギー」に火をつけ、チームとしての「目的のエネルギー」「異質のエネルギー」「場のエネルギー」を上手に上げていく「打ち手」を繰り出すことができなくてはならないのだ。

3.イエスマンでいい時と自分の意見を言うべき時をわきまえる

 最後の3つ目は、変革時における経営トップに対しての態度の問題についてである。一般論として「イエスマン」が恥ずべき管理職の例示として語られ、上に対して言いたいことを積極的にぶつけていくことができることが奨励される傾向にある。

 しかし、これらのことも程度問題であり、さらには時と場合によっては、そのことが問題を引き起こすことにもなりえる問題である。平時ならまだしも、変革時のひっ迫した中で組織としての決定事項を一気呵成に実行に移さなくてはならない局面で、ここぞとばかりに自分の持論を滔々と述べても障害になるだけである。多少の言いたいことはグッと呑み込んで、全体の利益を第一に考えた行動をしてくれる管理職は貴重な存在である。(今野誠一)

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