初音ミクと日本のクリエイティビティ中村伊知哉のもういっぺんイってみな!(2/2 ページ)

» 2013年01月02日 00時00分 公開
[中村伊知哉,@IT]
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 課題は、第2、第3の初音ミクをどう生んでいくのか、長期的な環境を整備することだ。たまたま生まれ、みんなで育てた初音ミク。こんなイノベーティブなよい子を、最も生み続けたい。そのメカニズムを国内に確立したい。

 日本のクリエイティビティが育つことに期待がかかる。ところが、冒頭のアンケート結果は2つの問題も明らかにしている。

 まずは日本の自己評価が低いこと。他国が日本を評価しているのに比べ、日本のみが自分をクリエイティブだと思っていない。自らがクリエイティブだと考えている比率もダントツの最下位。米国人は52%が自分をクリエイティブと思っているのに、日本人は19%!

 ずっとそうなんだな。ジャーナリストのダグラス・マッグレイ氏が2002年、フォーリン・ポリシー誌に「Japan’s Gross National Cool」を掲載、日本のポップカルチャーを高く持ち上げた。いわゆる「クールジャパン」の嚆矢(こうし)となったレポートだ。当時僕らも盛んにこうした自己評価を発信していたが、海外からの1レポートによる評価の方が浸透力が高かった。ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授がソフトパワー論で後付けしたのも効いた。

 だからこれを自らのエネルギーに転化するのにてこずっている。ポップカルチャーのパワーを発揮する自家発電力がなかなか湧いてこない。今回の調査でも、自分の持ち物を正当に評価できないさまが見てとれる。

 それ以上にマズいのは、「創造力が経済成長のカギになると答えたのも日本が最下位」という結果だ。じゃ、みんなは何で食っていこうと思ってるのだろう。資源も、低廉な労働力もないというのに。資源はアラブやロシアや中国で、労働力は中国やインドで、じゃあ僕らはどうするというんだろう。知恵しかないんじゃないだろうか。

 アメリカは1980年代、クルマや家電のクリエイティビティで日本に負けたけど、1990年代以降、ITのクリエイティビティで巻き返した。日本はどのクリエイティビティを発揮していけばいいんだろう。

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