もうひとつの福島――「只見線」を忘れてはいけない杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)

» 2012年12月28日 08時01分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

3つの鉄橋が流出、復旧の見込み立たず

 只見線は福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ、約135キロメートルの路線だ。全線単線、全線非電化のローカル線である。全区間の所要時間は5時間ほどかかる。豪雪地帯の山間部を走り、沿線人口も少ないため営業成績は良くない。運行本数も少なく、国鉄時代に赤字路線として廃止対象になったほどだ。

 しかし豪雪地帯ゆえに道路交通も遮断されるため、廃止対象リストから外された。地元の人々の貴重な足であり、秘境・景勝路線として旅行者にも人気がある。紅葉の時期にはテレビの旅行番組などで紹介されるから、名前だけは知っているという人も多いだろう。

 その只見線の災難は2011年7月30日だった。「平成23年7月新潟・福島豪雨」によって、新潟県と福島県の県境付近で大きな被害が出た。河川が反乱するなどで、死者4名、行方不明2名、家屋の被害は全壊21、半壊4、浸水被害は9700を超えていた。

 只見線は只見川第5、第6、第7橋梁(きょうりょう)が流され、他の区間も路盤(舗装道路で舗装表面と路床との間の砕石や砂を敷き詰めた部分)が流出するなどの被害があった。被災当初は会津坂下―小出間の113.6キロメートルが不通となった。その後、不通区間の両側から復旧工事が進められ、2012年10月1日に只見―大白川間が復旧。残すは鉄橋が流出した会津川口―只見間のみとなった。

 ここまでは、ゆっくりだが順調に復旧してきた。しかし、ここから先の3つの鉄橋はまだ落ちたまま。復旧の見通しは立たないという。これらの鉄橋はすべて福島県大沼郡金山町にある。被災から1年以上たち、また雪で孤立する冬がやってきた。

JR只見線第5鉄橋・西谷地区(豪雨災害前、出典:金山町)
JR只見線第5鉄橋・西谷地区(豪雨災害後、出典:金山町)

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