年末年始にオススメする、震災関連の書籍相場英雄の時事日想(3/4 ページ)

» 2012年12月27日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
東日本大震災津波 岩手県防災危機管理監の150日』(著・越野修三、ぎょうせい)

 まず最初に紹介するのが、『東日本大震災津波 岩手県防災危機管理監の150日』(著・越野修三、ぎょうせい)だ。本書は、陸上自衛隊の作戦部長から岩手県庁の防災危機管理監に転じた著者の震災発生からのドキュメントだ。自衛隊の作戦部長を務めた著者だけに、文章に一切の無駄がなく、県の災害対策本部がどのように動いたのかが克明に記されている。同時に、危機管理のプロが示す教訓が生々しく、読み手の心をわしづかみにする。

 本書は、自治体職員の格好のマニュアルともなり得る。危機管理のプロが綴る「災害対策本部の心得十か条」の一部を引用する。


 (1)大規模災害は必ず起きると思って準備せよ(2)情報は入らないと思って空振り覚悟で対処せよ。見逃しは許されない(3)常に被災者の目線で考えよ〜中略〜(9)普段やっていないことは災害時には絶対できない。実践的な訓練が不可欠である(10)災害対策本部の活動記録は必ず残しておけ

 (9)と(10)の項目は、政府中枢の人たちにも是非とも読んでいただきたい事柄だ。


 次に紹介するのは『その時、ラジオだけが聴こえていた IBC岩手放送3・11の記録』(竹書房)。大震災発生当初から、108時間に渡って生放送を続けた地元ラジオのドキュメントだ。停電でテレビやネットの情報から遮断された岩手県民を励まし続けたラジオのスタッフたちの肉声が綴られている。

 地元の災害を地元のメディア人が伝える。この事柄は、震災を1つの大きな素材ととらえた在京メディアと、自らも当事者だという感覚を持つ地元人との大きな違いを生んだ。先の福島の地元紙と同様に、岩手の小さなラジオ局がどのような心構えで生放送に臨んだのか、メディアを志す若者のほか、現役の報道人にも必読の書だ。


ガレキ』(著・丸山佑介、ワニブックス)

 最後に紹介するのは『ガレキ』(著・丸山佑介、ワニブックス)。本書は、文字通り震災によって発生したがれきを主題としたルポだ。被災県の県知事や首長をはじめ、原発作業員や産業廃棄物処理業者などさまざまな人に徹底したインタビューを行っている。

 新聞や週刊誌、あるいはテレビの企画番組では伝え切れなかったがれきに関する詳細を綴っている。同書の中で、岩手県陸前高田市の戸羽太市長のインタビューが掲載されている。この一節を引用する。




 ……だって1年2カ月、3カ月……時間はどんどん経っていくのに、いまだにガレキの話なんですよ。陸前高田だけではなく被災地の人からすれば、発生した日から、ずっとそこにあるものなのです。広域処理で運ばれる先の事情ばかりが注目され、ガレキを生み出した地域にいる被災者の感情が置き去りにされていることで、余計に感情論で語られているように思います……

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